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クーリッシュの血液混入は本当? ロッテの検査結果と原因不明の理由

噂の追跡調査
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アイスを食べようとしたら、中から赤いものが出てきた。

2026年10月、そんな投稿がThreadsで話題になった。商品はロッテの「クーリッシュ バニラ」。投稿者は、口をつける前に赤い異物に気づき、メーカーへ調査を依頼したと説明している。

赤い着色料なのか、それとも別の何かなのか。見た目だけでは分からないが、この件では実際に商品が回収され、分析が行われていた。

10月9日、ニュースメディア「ENCOUNT」がロッテ広報部に取材したところ、回収した試料について血液だったという回答があった。一方、製造記録や保存サンプルなどを確認しても、混入原因は特定できなかったという。

血液だとは分かった。それなのに、なぜ商品に入っていたのかは分からない。

この話には、さらに気になる続きがある。2022年にもクーリッシュから赤い液体が出てきたという投稿があり、そこでもメーカーの検査で血液だったと説明されたという。2025年にも、別の投稿者が似た異物の写真を公開していた。

ただし、これらの報告が同じ原因によるものかどうかは分かっていない。過去の投稿も、2026年の企業取材と同じ水準で検証できたわけではない。

今回の記事では、当事者の投稿やメーカーの説明を整理したうえで、クーリッシュの製造工程、血液の色と冷凍保存、検査方法を調べていく。赤い異物が局所的に見える理由から、自主回収を予定しないという企業の判断まで、確認できる資料を一つずつたどってみたい。

クーリッシュから血液? 2026年の報告とロッテの回答

今回の騒動の発端は、Threadsに投稿されたクーリッシュの写真と動画だった。投稿者によれば、食べようとした商品の中から赤い異物が見つかったため、ロッテへ調査を依頼したという。やがて分析結果をめぐる投稿が注目され、10月9日にはニュースメディアがメーカーへ直接取材する事態となった。

まずは、どのような経緯で赤い異物が見つかり、メーカーが何を説明したのかを整理しておこう。

口をつける前に赤いものを発見したという投稿

最初に注意喚起を行ったのは、Threadsの「shio.shoco」というアカウントだ。投稿者は、ロッテの「クーリッシュ バニラ」から赤いものが出てきたとして、写真や動画を公開した。

本人の説明では、まだアイスが固かったため、食べる前に容器を揉んで柔らかくしようとしていた。その際に赤いものに気づき、不審に思って中身を皿へ出し、動画を撮影したという。つまり、本人は口をつける前に発見したと述べている。

Threadsで見る

クーリッシュは、カップ入りのアイスクリームとは少し違う。柔らかいパウチ容器を押したり、吸い口から吸ったりして食べる商品だ。

そのため、口をつけて食べている最中に赤いものが出てきたのであれば、口内の出血などが関係した可能性も検討対象になるだろう。実際、2022年の類似報告でも、メーカーからそのような事例について説明を受けたという投稿が残っている。

しかし、今回の投稿者は口をつけていないと説明している。この証言が事実であれば、本人がアイスを吸った際に口内から出血し、それが商品へ混ざったという経路は考えにくくなる。もっとも、これは発見時の状況についての本人の証言だ。口をつけていなかったという説明だけで、異物がいつ商品に入ったのかまで確定するわけではない。

回収された製品と分析結果報告書

投稿者は、ロッテへ商品を調査してもらった結果についても発信している。公開された画像には、ロッテ中央研究所によるものとされる分析結果報告書が写っていた。画像から読み取れる範囲では、対象商品は「クーリッシュ バニラ」で、2026年9月18日付の報告書となっている。

そこに記されていた検査名が「ロイコマラカイトグリーン反応試験」だ。耳慣れない名前だが、血液の存在を調べるために法科学の分野でも利用されてきた化学的な試験である。試料に試薬を加え、特徴的な発色が起きるかどうかを確認する。

投稿された報告書画像には、試料が陽性反応を示し、血液の存在が確認されたという趣旨の結論が記載されている。

Threadsで見る

ただし、報告書の画像だけですべての検査内容が分かるわけではない。ロイコマラカイトグリーン反応は血液の予備検査として利用される方法であり、この反応だけで人間由来の血液かどうかや、誰の血液なのかを判定することはできない。また、同じ試料に対してほかの分析が行われたのかどうかも、公開された画像からは確認できない。

その点については後の章で詳しく説明するが、今回の件ではもう一つ重要な情報がある。ロッテ自身が、報道機関の取材に対して血液だったと回答していることだ。

ロッテが取材で認めたこと、認めていないこと

報道取材の要点

2026年10月9日のENCOUNTの取材に対し、ロッテは回収した試料を血液と判断したと回答した。製造日報や保存サンプル等を確認しても製造上の異常は見つからず、混入原因は特定できなかったという。自主回収の予定は、取材時点ではないと説明している。

2026年10月9日、ニュースメディア「ENCOUNT」は、投稿者本人とロッテ広報部に取材した内容を報じた。記事によれば、ロッテは回収した試料を分析した結果、血液だったと回答している。一方で、混入原因については特定できなかったという。

ロッテの説明では、クーリッシュの製造ラインは、アイスクリームミックスを密閉された配管で搬送し、パウチ容器への充填も自動で行う仕組みになっている。製造日報や保存サンプルなども確認したものの、製造工程上の問題は見つからなかったとされる。そのため、ロッテは製造工程で血液が混入した可能性は極めて低いという見解を示している。

出典:ENCOUNT(2026年10月9日)クーリッシュの血液異物報告に関する取材記事

ロッテが取材で説明した主な内容

  • 回収した試料は血液だったと判断した。
  • 製造日報や保存サンプルを調べたが、製造上の問題は確認されなかった。
  • 製造工程での混入の可能性は極めて低いという見解を示した。
  • 血液が混入した原因は特定できなかった。
  • 2026年10月9日の取材時点では、自主回収を予定していなかった。

これは報道機関に対する企業の説明であり、調査記録のすべてが公開されたことを意味するものではない。

赤い異物は血液だったとロッテが回答している。しかし、製造工程を調べても血液の混入につながる異常は確認されず、原因も分からなかった。原因を特定できなかったからといって、製造中に混入したことが証明されるわけではない。反対に、製造記録に問題が見つからなかったことだけで、投稿者の説明が誤りだったと判断することもできない。

そして、その空白を考えるうえで気になるのが、公開された画像に写る赤い部分の状態だ。アイス全体が均一に赤くなっているというより、白いアイスの一部に赤いものが残っているように見える。クーリッシュの製造工程を考えると、これは確かに気になる特徴だった。

赤い部分はなぜ偏って見える? 撹拌・充填・出口の疑問

クーリッシュの画像や動画では、赤い部分がアイス全体に均一に広がっているようには見えない。白いアイスの中に、赤いものが局所的に残っているように見える。

この見え方について、「もし製造中に血液が混入したのなら、原料と一緒に混ぜられて全体へ広がるはずではないか」という疑問を持つ人もいるだろう。もっとも、赤い部分が偏って見えることと、実際に容器の中で異物がどのように分布していたかは別問題だ。写真や動画に映っているのは、撮影時に外から見えた一部分にすぎない。

それでも、製造工程を確認することで、少なくともどの段階で物質が混ざりやすく、どの段階では局所的に残る可能性があるのかを考えることはできる。

混合されたら均一になるのか――クーリッシュの製造工程

メーカー公式資料の要約

ロッテの「クーリッシュができるまで」では、原料の混合・均質化、熟成・凍結、氷の混合、容器への充填、梱包といった一般的な製造工程が紹介されている。

ロッテの公式サイトには、「クーリッシュができるまで」というバーチャル工場見学が公開されている。そこで紹介されている工程は、大きく分けて「混合・均質化」「熟成・凍結」「氷の混合」「充填」「梱包」の5段階だ。

最初に乳製品や砂糖などの原料を温めながら混ぜ合わせ、圧力をかけて成分を細かく均質化する。その後、殺菌・冷却などの工程を経て、さらに細かく砕いた氷を混ぜ、パウチ容器へ充填する。つまり、クーリッシュは原料を袋に入れてから混ぜるのではなく、いくつもの工程で混合や撹拌を行った後に容器へ入れられる商品なのだ。

参考:ロッテ公式「クーリッシュができるまで|バーチャル工場見学」

この製造工程については、Threadsでも関心を集めている。次の投稿では、クーリッシュが製造ラインに並ぶ様子を紹介し、自動化された工程のどこで血液のようなものが混入し得るのかという疑問が示されている。

Threadsで見る

投稿では、工場の映像を踏まえて、人の手が加わらないように見える工程で、なぜ血液のようなものが混入するのかと疑問を投げかけている。ただし、製造ラインが自動化されていることと、製造工程に人が一切関わらないことは同じではない。また、この投稿で紹介されている映像は、問題となった商品が実際に製造された際の記録ではない。

こうした工程を知ると、一つの疑問が浮かぶ。もし液体の血液が原料の混合段階で入り、その後も十分に撹拌されていたなら、赤い成分はかなり広い範囲へ分散するのではないか。物理的には十分考えられる。

ただし、実際にどの程度混ざるかは、異物の量や状態、原料の粘度、撹拌の強さや時間によって変わる。液体の血液だった場合と、すでに固まりを含んでいた場合とでは、分散の仕方も異なる可能性がある。また、最終的な混合工程が終わった後で何らかの物質が加わった場合には、十分に分散しないまま容器へ入ることも、物理的な仮説としては考えられる。

しかし、それは製造工程から想定できる条件の違いを述べたものであって、今回実際にそのような混入が起きたという意味ではない。そもそもロッテは、密閉された配管や自動充填を採用していることなどから、製造工程で血液が混入した可能性は極めて低いという見解を示している。公式の工場見学も一般向けの説明であり、問題となった商品の具体的な製造記録ではない。

出口付近に赤い部分が見えることには、どんな意味があるのか

もう一つ気になるのは、赤いものがどこに見えているかという点である。投稿された画像や動画では、クーリッシュの吸い口から出されたアイスに赤い部分が見える。このため、赤いものが最初から吸い口付近にあったのではないかと考えたくなる。

しかし、クーリッシュは容器を揉んだり押したりして、中身を吸い口へ移動させる商品だ。容器内部の別の位置にあった異物が、アイスの移動とともに出口へ運ばれた可能性も考えられる。

仮に、最初に押し出したアイスに赤い部分が含まれていたとしても、それだけで異物が最初から吸い口付近にあったとは言えない。内容物がどのように動いたのか、容器の内部にどれだけ残っていたのか、発見前にどの程度揉んだり押したりしていたのかによっても見え方は変わり得る。赤いものが押し出されたアイスの表面に見えていたのか、内部に含まれていたのかという違いもある。

こうした異物の分布について、製造業に携わるというThreadsユーザーが、別の視点から考察している。投稿では、自動化された製造ラインであっても、原料段階で混入した場合と、充填設備などに局所的な付着があった場合とでは、製品中の異物の分布が異なり得ると指摘している。

Threadsで見る

投稿者による考察

この投稿は、製造現場に関わるという本人の立場から示された考察であり、今回のクーリッシュの製造記録を直接調べた結果ではない。それでも、混入した段階によって異物の分布が変わるという視点は参考になる。原料の混合段階であれば広く分散する条件が想定できる一方、混合工程後に局所的な付着が生じた場合には、限られた場所に残る可能性もある。

製造工程の外側で何らかの物質が付着した可能性も、検討上の仮説として挙げられる。ただし、今回の出来事についてどれが実際に起きたのかを示す証拠ではない。混入経路を検討するためには、赤い部分の見え方だけでなく、発見時の容器の状態や、残された内容物、吸い口やキャップの状態なども重要になる。

「口をつけていない」という証言で、何が分かるのか

今回の投稿者は、まだ口をつけていない段階で赤いものを発見したと説明している。この証言が事実であれば、本人がクーリッシュを吸った際に口内から出血し、それが商品に混ざったという経路は考えにくくなる。しかし、口をつけていないことと、容器がそれまでどのような状態にあったかを証明することは同じではない。

食品の異物混入を調べる際には、購入時の容器の状態、開封時に行われた操作、発見後の保管方法なども重要な検証材料となる。今回の投稿者は、発見した赤いものを皿へ出して撮影したと説明している。これは異常を記録する自然な対応でもあるが、容器の中から外へ内容物を移した後では、発見前の配置を完全に再現することが難しくなる場合がある。

ここで、投稿者が意図的に異物を加えたと考える根拠はない。同時に、製造工程で混入したことを示す決定的な資料も確認できていない。必要なのは、本人の証言から分かることと、容器や内容物などの物証によって確かめるべきことを区別する姿勢だろう。

血液は時間が経つと茶色くなるといわれる。それなら、仮に製造段階から長期間冷凍されていた血液だった場合、今回の映像のような赤い色が残ることはあるのだろうか。

古い血液は茶色くなる? 冷凍アイスで赤いままなのか

血液は時間が経つと茶色くなる。怪我をしたときの血や、乾いた血痕を思い浮かべれば、そう考えるのも自然だろう。今回のクーリッシュについても、赤い異物の色に注目した人がいた。もし製造段階で血液が混入し、その後長い間冷凍されていたなら、もっと暗い色に変化していてもおかしくないのではないか、という疑問だ。

一方で、冷凍されていたのだから血液の変化も止まり、赤いまま残るのではないかという見方もある。どちらも一見もっともらしい。しかし、血液の変色には複数の化学的な変化が関わっており、凍結したかどうかだけで結果が決まるわけではない。

時間が経った血液が茶色くなるのはなぜか

血液の赤い色を生み出しているのは、赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質だ。ヘモグロビンは酸素を運ぶ働きを持ち、化学的な状態によって見え方が変わる。酸素と結びついたオキシヘモグロビンは鮮やかな赤色を呈するが、時間の経過とともに化学的な変化が進むと、暗い赤色や褐色へと変わることがある。

ヘモグロビンに含まれる鉄の状態が変わると、メトヘモグロビンと呼ばれる状態になり、さらにヘミクロムなどへ変化していくことがある。こうした変化は、乾いた血痕が時間の経過とともに褐色化する理由の一つだ。

2011年に学術誌『PLOS ONE』へ発表された研究では、血痕中のヘモグロビンの状態を光学的に測定し、時間の経過による変化を調べた。オキシヘモグロビンからメトヘモグロビンへの酸化は一定の速度で進むわけではなく、初期に比較的速く変化した後、進み方が緩やかになることが示された。温度や湿度といった環境条件も変化に影響していた。

出典:Bremmerほか(2011)「Biphasic Oxidation of Oxy-Hemoglobin in Bloodstains」

ただし、この研究が対象にしたのは血痕である。クーリッシュのような乳製品や糖分、微細な氷を含む食品の内部にある血液について、同じ条件で実験したものではない。乾いた血痕で確認された変化を、そのまま冷凍食品の内部に当てはめることはできない。

冷凍保存の温度によって血液の酸化はどう変わるのか

1988年、日本の研究者らが血液を異なる低温条件で保存し、酸化に伴って増えるメトヘモグロビンの濃度を調べている。その結果、マイナス80℃やマイナス196℃で保存した全血では、少なくとも30日間、メトヘモグロビン濃度はほぼ安定していた。一方、マイナス30℃では酸化の進行が観察されたという。

出典:Satoほか(1988)「Long-term storage of blood samples as whole blood at extremely low temperatures for methemoglobin determination」

マイナス30℃も十分に低い温度に思えるが、さらに低い温度で保存した試料とは結果が異なっていた。血液が凍っているというだけで、酸化の進み方を一律に説明できないわけだ。

さらに2002年には、凍結保存した血液試料でメトヘモグロビンの濃度が増加したという報告がある。この研究では、マイナス14〜12℃で保存された試料について、保存6時間後に1.8%だったメトヘモグロビンの割合が、6日後には10.9%まで増加した。

出典:Wallace・Curry(2002)「Postcollection rise in methemoglobin level in frozen blood specimens」

研究条件の違いを整理すると、次のようになる。

研究 保存条件 報告された変化
Satoほか(1988) −80℃・−196℃/少なくとも30日間 メトヘモグロビン濃度はほぼ安定
Satoほか(1988) −30℃ 酸化の進行を観察
Wallace・Curry(2002) −14〜−12℃/6時間後〜6日後 メトヘモグロビン1.8%→10.9%

※いずれも実験用の血液試料についての研究であり、クーリッシュ内での血液の変色を直接測定したものではない。

ただし、この数字から、その試料が肉眼で何色に見えたのかまで判断することはできない。メトヘモグロビンが増えることは、ヘモグロビンの酸化が進行したことを示す。しかし、目で見たときの赤さや茶色さは、血液の量や厚み、周囲の物質、光の当たり方などにも左右される。

今回の映像に見える赤い部分についても、画面上の色だけで酸化の程度を測定することはできない。これらの研究はいずれも血液試料を一定の条件で保存した実験であり、クーリッシュの中に存在する血液について、保存期間と色の関係を直接調べたものではない。

血液が凍ることと、凝固することは同じではない

もう一つ整理しておきたいのが、「血液が固まる」という言葉だ。普段はあまり意識しないが、血液が固まるという表現には、性質の異なる二つの現象が含まれている。一つは、怪我をしたときなどに起こる血液凝固。もう一つは、低温による凍結だ。

血液凝固では、血小板や凝固因子が関わり、フィブリンという網目状の構造が形成される。出血した血液が固まり、傷口から流れ出るのを防ぐための生理的な仕組みである。一方、凍結は血液に含まれる水分が氷になる物理的な現象だ。氷ができたからといって、それだけで血液凝固の反応が起こったことにはならない。

すでに凝固していた血液が凍ることもあれば、凝固していない液体の血液が低温で凍結することもある。さらに、血液を凍らせたり解凍したりすると、氷の結晶や周囲の濃度変化などによって赤血球が損傷し、中に含まれるヘモグロビンが外へ出る場合がある。これを「溶血」と呼ぶ。

参考:Nei(1976)赤血球の凍結傷害と解凍後の溶血に関する研究

血液が液体だったのか、凝固した塊を含んでいたのか、凍結や解凍によって赤血球が損傷していたのか。それぞれの状態によって、周囲への広がり方や見え方は変わり得る。しかし、今回のクーリッシュの試料がどのような状態だったかは、公開された映像や報告書画像だけでは判断できない。

赤い色だけで「最近混入した」と判断できるのか

時間の経った血液が褐色になることは事実だ。しかし、その変化の進み方は温度や保存状態によって異なる。冷凍された血液でも、どのような条件に置かれていたかによって酸化の程度は変わり得る。今回の映像に赤い部分が見えるからといって、製造時から存在していた血液ではあり得ないとは言えない。反対に、冷凍保存していたのだから赤い色が残って当然だとも言えない。

映像で見える色は撮影時の照明、カメラの処理、白いアイスとの対比などによって印象が変わる。血液がいつ混入したのかを考えるには、製品の保存温度、血液の量、周囲のアイスとの接し方などの情報が必要になるが、今回の公開資料では詳細を確認できない。

赤いものの位置や色から混入経路を決めることはできなくても、試料そのものを調べれば、物質の性質についてはより多くの情報が得られる。ただし、検査によって血液の存在が示されたとしても、誰の血液なのか、いつ商品に入ったのかという疑問まで同時に解決するわけではない。

ロッテが用いた血液検査は何を示したのか

赤い異物の位置や色だけでは、それがいつ、どこから商品に入ったのかを判断できない。では、ロッテが行ったという血液検査からは、どこまで分かるのだろうか。2026年の投稿者が公開した報告書画像には、「ロイコマラカイトグリーン反応試験」という検査名が記されている。

一方、ニュースメディア「ENCOUNT」の取材に対して、ロッテも回収した試料は血液だったと回答している。血液かどうかを調べる検査と、人間の血液かどうかを調べる検査、さらに個人を識別するための検査では、目的も得られる情報も異なる。

ロイコマラカイトグリーン反応とは何か

ロイコマラカイトグリーンは、法科学の分野で血痕の存在を調べるために使われてきた試薬の一つである。血液に含まれるヘモグロビンのヘムが、過酸化水素を使った酸化反応を促進する性質を利用する。

ロイコマラカイトグリーン自体は、反応前にはほとんど色がない。ところが、酸化されると青緑色のマラカイトグリーンへ変化する。そのため、疑わしい試料に試薬を加え、特徴的な発色が起きるかどうかを調べることで、血液が存在する可能性を判断できる。つまり、もともと赤いものを見つけるための検査ではなく、試料に含まれる成分が化学反応を起こすかどうかを調べている。

ただし、血液に関係する化学反応が起きたからといって、その物質の正体をあらゆる意味で確定できるわけではない。ロイコマラカイトグリーン反応は、法科学では一般に血液の予備検査として扱われている。

血液の予備検査は、どこまで信用できるのか

「予備検査」と聞くと、簡易的であまり信用できない検査のように感じるかもしれない。しかし、予備検査という言葉は、検査そのものの価値が低いことを意味するわけではない。対象となる物質が存在する可能性を効率よく調べ、必要に応じて次の確認につなげるための方法だ。

1991年、Milton Coxは血液の予備検査に用いられる4種類の試薬について、感度と特異性を比較した。感度とは、対象の物質が存在するときにそれを検出できる能力のこと。特異性は対象ではない物質に反応しにくい性質を指す。比較対象の中でロイコマラカイトグリーン反応とフェノールフタレインを使った方法が比較的高い特異性を示したと報告されている。

出典:Cox(1991)「A Study of the Sensitivity and Specificity of Four Presumptive Tests for Blood」

したがって、この検査を「血液以外のものにも何でも反応する、あてにならない方法」と説明するのは適切ではない。一方、特異性が高いことと、血液以外の物質には絶対に反応しないことは同じではない。ヘムと似た働きで酸化反応を促進する物質や、試薬に影響する成分が存在すれば、血液ではないものに陽性反応が出る可能性もある。

参考:Jaremkoほか(2024)血痕の予備検査と感度に関する研究(2023年オンライン公表)

ここで今回のクーリッシュに漂白剤のような物質が含まれていたと考える根拠はない。あくまで検査方法には一般的な限界が存在するという説明である。

今回の報告書画像から確認できる試験名はロイコマラカイトグリーン反応試験であり、結果欄には陽性反応と血液の存在を確認したという趣旨の結論が示されている。さらにロッテは報道機関に対して、回収した試料が血液だったと回答した。

この企業の回答を予備検査という名称だけで否定することはできない。一方、公開された報告書画像だけでは、別の確認試験を実施したのか、どのような検査手順を経て最終判断に至ったのかまでは確認できない。

血液の検出と、人間由来の血液の確認は違う

仮にある試料に血液が含まれていることが確認できたとしても、次に考えるべきなのは血液の由来である。そこには少なくとも三つの異なる問いがある。試料に血液が存在するのか。それは人間の血液なのか。そして、人間の血液なら誰に由来するのか。

確認したいこと 検査で得られる情報の例 注意点
血液の存在 ロイコマラカイトグリーンなどの予備検査 予備検査だけで人血と断定できない
人間由来か 人ヘモグロビンなどを標的とする検査 実施の有無は公開資料で未確認
個人の識別 試料の状態が許せばDNA型検査 成功や混入経路の特定を保証しない

ロイコマラカイトグリーン反応は基本的に最初の問いに関係する。この反応だけで人間と動物の血液を区別したり、提供者を識別したりすることはできない。人間由来かどうかを調べるには、人ヘモグロビンなどを標的とする別の検査が利用される場合がある。個人識別に役立つ情報を得るためにはDNA型検査という方法も考えられる。

ただし、DNA型検査は試料の量や保存状態、ほかの物質との混合、検査前に使用された試薬などによって結果が変わる。2007年の研究では、血液の予備検査に使われる試薬の種類によって、その後のDNA解析への影響が異なることも検討されている。

出典:Tobeほか(2007)「Evaluation of Six Presumptive Tests for Blood, Their Specificity, Sensitivity, and Effect on High Molecular-Weight DNA」

これは今回の試料からDNA型を調べられたはずだとか、実際には分析できなかったはずだという意味ではない。試料の詳しい状態や分析手順が分からない以上、その可否までは判断できない。また、仮に血液の由来について情報が得られたとしても、いつ商品へ入ったのかを特定できるとは限らない。

今回の検査について、公開資料では確認できないこと

ロッテがロイコマラカイトグリーン反応以外にどのような試験を行ったのか、人間由来の血液かどうかを調べたのか、DNA型検査を実施したのかは不明である。これは、検査を実施しなかったと断定するものではない。

血液と判断されたという回答はある。しかし、混入した時点や場所については、調査しても特定できなかったと説明されている。では、似た報告は今回が初めてだったのだろうか。

2022年にも赤い異物の投稿――同じことが繰り返されたのか

2026年のクーリッシュをめぐる報告は、SNSで初めて語られた出来事ではなかった。過去の投稿を調べると、2022年にもクーリッシュから赤い異物が出てきたという報告が見つかる。さらに2025年12月には、購入したばかりのクーリッシュから血のようなものが出てきたという別のアカウントによる報告もあった。

こうして並べると、同じ商品で似た出来事が繰り返されているように見える。しかし、投稿の日付と異物を発見した日は必ずしも一致しない。一人の投稿者が過去の出来事を何度も振り返っている場合、それらを別々の報告として数えてしまうことにも注意が必要だ。

2022年3月末に購入したクーリッシュ――練乳味から赤いものが出てきたという報告

今回確認した資料の中で出来事の時期が最も古いとみられるのは、Xアカウント「やな(@yncr_7)」さんによる報告だ。本人の投稿を紹介したスクリーンショットによると、2022年3月末に「クーリッシュ 練乳味」を購入し、容器を絞った際に赤い塗料のようなものが出てきたという。

ロッテに連絡して調査してもらったところ、血液だったと説明されたと投稿者は述べている。画像には、赤い部分が付いたアイスの写真と検査報告書とみられる文書が写っている。報告書画像には「ロイコマラカイトグリーン反応試験」と、血液の存在が確認されたという趣旨の結論が見える。

ただし、今回参照できたのは投稿のスクリーンショットと報告書画像である。文書の原本や分析の全工程を独立して検証したわけではない。また、報告された購入時期は本人の説明であり、投稿日時と混同してはいけない。

その後、同じ投稿者は2022年12月29日にも、過去の出来事について言及している。

投稿内容の要約

2022年12月29日・やなさんの回顧投稿

2022年3月末に購入した練乳味で赤い異物が出たという過去の出来事について、ロッテからは製造中の混入は考えにくいと説明されたものの、納得できていないと述べている。

この投稿から、本人がロッテの説明に納得できていなかったことがうかがえる。ただし「血液が混ざっている」という表現は投稿者の認識であり、製造工程で血液が混入したことを証明するものではない。12月の投稿も同じ出来事についての追加発言と考えられ、新しい事例には数えない。

2022年7月にも別の報告――血液という説明とロッテの報告書

2022年7月6日、別のアカウント「みそはち(@misohachi17)」さんも、クーリッシュから赤い液体が出てきた件について投稿している。こちらもロッテへ調査を依頼したところ、血液だったという説明を受けたと述べている。

投稿内容の要約

2022年7月6日・みそはちさんの報告

クーリッシュから赤い液体が出たとしてロッテへ調査を依頼したところ、血液だったと説明されたという。投稿者は、食べる前に口をつけていなかったとも述べている。

この投稿では、赤い液体についての説明だけではなく、本人がまだ口をつけていないと述べていること、ロッテから製造工程で血液が混入する可能性はないという趣旨の説明を受けたとしていることが注目される。

同じ日の別の投稿では、ロッテから届いたという調査報告書の画像も公開された。

投稿内容の要約

2022年7月6日・報告書を紹介した投稿

ロッテから届いたという報告書の画像を公開し、さらに詳しく調べるべきではないかとの疑問や、自分の証言を疑われるかもしれないという不安を述べている。

投稿者は、本人の言い分が疑われるのではないかと心配していた。そして、血液という検査結果が示されても、それがどこから来たのか分からないままだったことに疑問を抱いていた。

2022年の二つの報告には確かに共通点がある。どちらもクーリッシュから赤いものが出てきたと訴え、ロッテの調査で血液だったと説明されたと述べている。また、製造工程での混入についてメーカー側が否定的な見解を示していたという点も似ている。

ただし、同じ原因だったと判断するには材料が足りない。商品の製造時期やロット、異物の状態、分析条件などを十分に比較できる資料が揃っていないためだ。

2025年にも残っていた疑問――3年前の報告者と新しい赤い異物の投稿

2025年9月6日、みそはちさんは別のXアカウントへの返信で、3年前のクーリッシュの件を振り返っている。その説明によれば、ロッテに問い合わせた後、担当者が自宅を訪れて現物を受け取り、返金が行われた。その後、調査報告書が届き、何度か電話でやり取りしたものの、納得のいく回答は得られなかったと述べている。

投稿内容の要約

2025年9月6日・みそはちさんの振り返り

2022年の問い合わせ後、担当者による現物回収と返金、報告書の送付、電話でのやり取りがあったと振り返っている。同じ事例についての後年の説明であり、新しい混入報告ではない。

これは2022年の出来事についての追加証言であり、新たな異物混入の報告ではない。返信先の元投稿は閲覧制限によって内容を確認できていないため、相手が新しい異物混入を報告していたのかどうかは分からない。

一方、同年12月9日には別のアカウント「ちゃんよう(@yocomasaco)」さんが、みそはちさんの2022年の投稿へ返信している。投稿者は、購入したばかりのクーリッシュから血のようなものが出てきたと述べ、赤いものが写った写真を公開していた。

検査結果は未確認

こちらは別のアカウントによる報告だが、2022年の二つとは大きな違いがある。2025年12月の件について確認できるのは、赤いものを発見したという本人の説明と写真までで、その異物が実際に血液だったのか、メーカーが検査したのかについては資料を確認できていない。見た目が似ていることと、同じ物質が検出されたことは別である。

参考:関連するX投稿のリアルタイム検索表示(原投稿単体URLは未取得)

2026年のThreads投稿で再注目――4件の報告は同じ原因なのか

2026年10月、クーリッシュの血液異物をめぐるThreads投稿が注目を集めると、過去のX投稿や報告書画像を掘り起こす動きも現れた。当初「5件」とされた報告数が後から「4件」に訂正された紹介投稿もあった。

今回の調査で識別できた異なる報告候補も、2022年の二つ、2025年12月の一つ、そして2026年の一つという四つである。ただし、これは異なる報告者による四つの事例候補であって、四件すべてで血液の存在が確認されたという意味ではない。

時期 報告内容 確認できる根拠
2022年3月末に購入した商品 練乳味から赤いものが出た 本人の説明と報告書画像
2022年7月 赤い液体が出た 本人の説明と報告書画像
2025年12月 血のような赤いものが出た 本人の写真・投稿。検査結果未確認
2026年 赤い異物が出た ロッテが報道機関への取材で血液と回答

件数そのものより、根拠の強さがそれぞれ異なることを確認したい。2026年の事例では企業への直接取材がある。一方2022年は投稿者の説明と報告書画像が中心で、2025年12月は成分が確認できない。

同じ商品で似た報告が存在することには調べる価値がある。しかし、これらをすべて同じ原因によるものと考えるには、商品の製造時期やロット、異物の状態、調査内容についてさらに多くの情報が必要になる。企業が原因を隠していたと推測する根拠も、今回確認した資料にはない。

2026年の画像は2022年の使い回し? 製造番号と報告書への疑問

2026年の報告が広まるなかで、今度は異物そのものではなく、投稿画像の来歴を疑問視する声も現れた。Threadsでは、商品の裏面に印字された製造管理用の番号や、分析結果報告書の日付に注目し、以前の写真を再利用したのではないかという見方が示されている。

問題となった2026年の投稿画像を拡大すると、パッケージ下部に「+U」「/52」および「4UB1061735」と読める印字がある。ただし、ロッテがその番号をどのような規則で管理しているのかについて、今回参照できた資料では確かめられなかった。生成AIが番号から「2022年製造」と回答したというスクリーンショットも出回っているが、生成AIによる番号の解釈はメーカーの確認結果ではない。

2022年の異物報告画像と比べると、やなさんの練乳味はオレンジ系のパッケージであり、2026年に投稿されたバニラとは外観が異なる。また、2022年のみそはちさんの写真では、白い旧パッケージの吸い口付近に赤い筋状のものが写る。一方、2026年の画像では青いパッケージから皿へ押し出されたアイスに赤い部分が見える。少なくとも現在比較できるこれらの写真は、同じ画像をそのまま再掲したものには見えない。

ただし、2022年の比較対象となる商品の裏面の製造番号は、この資料では判読できない。そのため「番号が完全に一致する」という指摘を裏付けることも、すべての画像の来歴を完全に否定することもできない。報告書についても、同じ企業の検査文書で書式や表現が似ているというだけでは、日付部分が書き換えられた証拠にはならない。加工前後の元データや発行履歴を照合する必要がある。

加えて2026年の件では、ニュースメディアENCOUNTがロッテ広報部に直接取材し、回収試料について血液だったとの回答を報じている。この取材記事は、SNS上の画像分析とは別の情報源だ。画像についての疑問と、企業への取材によって確認された説明を同一視すべきではない。

この疑惑の現時点の位置づけ

製造番号の正式な読み方、各写真の撮影時点、報告書の元データについては、現時点で独立した確認ができていない。画像の使い回しや日付改変を断定できる証拠はなく、反対にすべての疑問が解消されたわけでもない。疑問を提示したことと、不正を証明したことは違う。

疑惑があるから黒と決めつけず、判断材料が足りないから白と断言もしない。確かめられた範囲を示し、その先は未解決のまま残しておきたい。

血液が検出されても自主回収しないのはなぜ?

2026年のクーリッシュの報告で、赤い異物の正体と並んで注目されたのが、ロッテの自主回収に関する判断だった。ロッテは回収した試料を血液と判断した一方、製造工程では混入につながる異常を確認できなかったと説明している。そして、取材時点では自主回収を予定していないという。

血液という検査結果が出ているのに、混入原因は不明。それでも商品全体の自主回収は行わない。この説明に疑問を持つ人がいるのも自然だろう。ただし、食品の自主回収は、一つの商品に異物が見つかったら必ず同じ種類の商品をすべて回収するという単純な仕組みではない。

製造記録と保存サンプルの調査では何が分かったのか

2026年10月9日のENCOUNTによれば、ロッテは回収した試料が血液だったことを認めたうえで、製造工程について調査した結果を説明している。同社によると、アイスクリームミックスは密閉された配管で搬送され、パウチ容器への充填も自動で行われる。作業員が原料に直接触れることを前提とした工程ではないため、製造工程で血液が混入した可能性は極めて低いという見解だ。

さらに、製造日報や保存サンプルなどを確認しても、製造上の問題は見つからなかったと回答している。

出典:ENCOUNT(2026年10月9日)ロッテへの取材

製造日報は、製造作業や設備の状態を後から確認するための記録である。保存サンプルは、製造された商品の状態を一定期間保管し、問題発生時の確認に役立てるためのものだ。こうした資料から同じ工程で作られた商品に共通の異常を調べることには意味がある。

しかし、保存された一部のサンプルに異常が見つからなかったとしても、同じ製造ロットに含まれるすべての商品に異物が存在しなかったことまで証明できるわけではない。異物がごく限られた商品だけに存在した場合、保存サンプルには含まれないかもしれない。反対に、保存サンプルで異常が確認されなかった結果に意味がないわけでもない。広く共通する問題が存在したかどうかを検討するうえでは重要な情報となる。

今回の調査で製造上の異常は確認されなかった。それでも、回収された試料に血液が存在した理由までは特定できていない。この二つの結果は同時に成り立ち得る。

食品の自主回収は、どのように判断されるのか

食品に血液などの異物が見つかった場合、メーカーには必ず自主回収の義務があるのだろうか。ここで区別しておきたいのは、商品を回収するかどうかという判断と、回収を始めた際に行政へ届け出る義務である。

日本では2021年6月1日から、食品などの自主回収についての届出制度が始まった。食品衛生法に違反する、または違反するおそれがある食品などを事業者が自主回収する場合、原則として行政への届出が必要になる。

参考:厚生労働省「自主回収(リコール)報告制度に関する情報」

ただし、この制度は「食品から異物が一つ見つかったら、同じ種類の商品をすべて回収しなければならない」と定めたものではない。自主回収が行われる際に行政が情報を把握し、消費者への情報提供や監視指導につなげる仕組みである。

一方、事業者が回収しないと判断すれば行政は何もできないという意味でもない。食品衛生法には、一定の違反がある食品について、行政が回収や廃棄などを命じることができる規定もある。したがって、事業者の自主回収と法令に基づく行政の措置は区別する必要がある。

異物が見つかったという報告について、どの範囲まで問題が及んでいるのか、同じ異常がほかの商品にも存在するおそれがあるのかといった情報も、回収の必要性を検討する材料となる。

今回のクーリッシュについては、ロッテが製造工程上の問題を確認できなかったことから、自主回収を予定していないと説明している。ただし、自主回収を予定していないという企業の判断と、商品の安全性についてすべての疑問が解消されたことは同じではない。

今回の件について行政が食品衛生法違反を認定した、あるいは回収命令を出したという情報は、確認した公開資料には見当たらない。それは行政によって製品の安全性が全面的に保証されたという意味でもない。説明は2026年10月9日時点の取材に対する回答であり、将来の対応まで確定したものではない。

原因不明の段階で、消費者は何を確認できるのか

メーカーの調査結果と、消費者が抱く疑問が必ずしも同時に解消されるわけではない。では、商品について気になることがあった場合、どのような情報を確認できるのだろうか。

食品を含む商品の回収情報は、消費者庁のリコール情報サイトなどで確認できる。ただし、回収情報が掲載されていないことだけで、個別の商品に問題が存在しないと証明されるわけではない。

不審な異物を発見した場合

無理に飲食せず、容器・残った内容物・表示情報をできるだけ保ち、メーカーや必要に応じて保健所へ相談する。撮影や記録が原因究明の手がかりになる場合がある。

記録しておきたい事項は、順番に整理すると分かりやすい。

  1. 飲食を中止する。無理に食べ続けず、状態を確認する。
  2. 現物を保存する。容器、キャップ、残った内容物を可能な範囲で保管する。
  3. 発見状況を記録する。異物に気づいた時刻、食べる前後の操作、写真・動画、製造番号や賞味期限、購入場所を記録する。
  4. 相談先に連絡する。メーカーの窓口に事情を伝え、必要に応じて保健所や消費生活相談窓口を利用する。

消費者ホットライン「188」では、身近な消費生活相談窓口の案内を受けられる。

今回のように何が起きたのかが分からない事例では、発見時の状態をできるだけ正確に残すことが重要になる。それは誰かを疑うためではなく、後から原因を調べる手がかりを失わないためだ。

ロッテは製造工程に異常が確認できなかったと説明している。しかし、血液の由来は分からないままである。では、混入経路を突き止めるためには、具体的にどのような情報が必要なのだろうか。

異物がどこから来たか、何を調べれば分かるのか

2026年のクーリッシュの報告には、最後まで答えが出なかった疑問がある。ロッテは回収した試料を血液と判断した。しかし、製造日報や保存サンプルなどを調べても、混入原因は特定できなかったという。

血液の色や検査結果から、混入した時期や場所を特定するのは難しい。だからといって手がかりがまったくないわけではない。赤い物質が容器のどの部分に存在していたのか。発見後、商品はどのように保管され、検査機関へ運ばれたのか。製造時の記録と、回収された容器の状態はどこまで照合できたのか。こうした情報は血液かどうかを調べる化学検査とは別の役割を持つ。

容器と吸い口に残された情報――内側と外側では意味が違う

クーリッシュは柔らかいパウチ容器にアイスが入っており、キャップを外した後、吸い口から中身を押し出したり吸ったりして食べる仕組みだ。今回のように吸い口付近から赤いものが出てきたという場合、アイスの中身だけでなく、容器や口栓の状態も重要な調査対象になる。

仮に吸い口の内側に赤い付着物が残っていたとしよう。その場合、少なくとも調査時点でその場所に物質が存在していたことは分かる。しかし、付着した時期は別問題だ。もともと容器の内部にあったものが吸い口へ移動した可能性もあれば、別の段階で付着した可能性もある。

反対に、吸い口の外側やキャップの内側にも同じような物質が見つかった場合も、その分布は原因を検討するうえで新しい情報になる。ただし外側に付いていたからといって必ず外部から入ったとは限らない。容器内部の内容物を押し出す際に、外側へ付着した可能性もあるからだ。

こうした容器内外の付着状況について参考になる別の事例がある。Threadsでは、クーリッシュとは異なるメーカーの商品について、吸い口に赤い付着物があったという調査報告書の画像が紹介されている。投稿された報告書画像には、吸い口の内側に赤茶色の付着物が確認されたこと、血液に関連する検査で陽性反応が示されたという趣旨の結果が記載されている。さらに、吸い口の外側面とキャップの内側には、同様の付着物が認められなかったという説明もあった。

Threadsで見る

これはクーリッシュとは別の商品についての報告だ。メーカーも異なり、商品の構造や使用状況も同じではない。また、今回確認できたのは投稿者が公開した報告書画像であり、文書の原本や検査の全工程まで独立して確認したわけではない。したがって、この事例からクーリッシュの混入経路を推定することはできない。

それでも、調査の進め方という点では興味深い。血液の可能性を示す検査結果とは別に、容器のどこに付着物があり、どこにはなかったのかが記録されているからだ。異物の成分と分布を組み合わせれば、混入経路を検討する材料が増える。

では今回のクーリッシュはどうだろうか。投稿には赤い異物の写真や動画があり、ロッテによる分析結果も報じられている。しかし、吸い口の内側・外側、キャップの内面、容器内部などについて、どの範囲まで詳しい観察を行ったかは、公開資料からは分からない。それらの調査が実施されなかったという意味ではなく、公表された情報に詳細が含まれていないということだ。

試料の採取から検査まで――保管履歴はなぜ重要なのか

異物の検査では、何が検出されたかと同じくらい、その試料がどのように扱われてきたかも重要になる。商品から赤い異物を発見し、すぐに写真を撮って包装や内容物を保管すれば、発見時の状況を後から確認する手がかりになる。逆に、発見後に容器を洗ったり内容物を別の場所へ移したりすると、異物が最初にどこにあったのか判断しにくくなる場合がある。

これは投稿者が不適切な行動を取ったという意味ではない。不審な異物に気づいて中身を皿へ出し、写真を撮るのは自然な対応でもある。ただ、発見時点とメーカーが現物を受け取った時点で状態が変わっていた場合、後から元の状態を完全に再現するのは難しくなる。

ここで参考になるのが、法科学における「チェーン・オブ・カストディ」という考え方だ。証拠資料がいつ、誰によって、どのように採取・保管・受け渡しされたかを記録し、取り扱いを追跡できるようにする仕組みである。食品メーカーの品質調査が刑事事件と同じ方法で行われるという意味ではないが、試料の由来や扱いの履歴が分かることには共通した意味がある。

食品の異物検査なら、発見日時、商品保管状態、採取場所、メーカーへの受け渡し、検査までの保存条件などが結果の解釈に役立つ。2022年7月に報告した「みそはち」さんは、2025年9月にロッテの担当者が自宅を訪れて現物を受け取り、返金したと説明している。調査報告書を受け取り、何度か電話でやり取りしたものの納得のいく回答は得られなかったという。

この投稿で分かるのは本人がどのような対応を受けたと説明しているかであり、現物の保管・分析の詳しい履歴までは分からない。2026年の件もロッテが商品を回収して分析したという情報はあるが、採取や保管の詳しい履歴は公表されていない。企業内部では記録が残されている可能性もあり、公表されていないことと存在しないことを区別する必要がある。

製造ロットと保存サンプル――調査では何が明らかになっていないのか

もう一つ重要なのが製造ロットに関する情報だ。製造ロットとは、一定の条件や期間でまとめて製造された商品を識別するための単位である。問題が見つかった場合、同じ条件で製造された商品がどの範囲に存在するかを調べる手がかりになる。

ロッテは製造日報や保存サンプルを調査したものの、製造上の問題は見つからなかったと説明している。しかし、保存サンプルは何点調べたのだろうか。問題の商品と同じロットか、製造中のどの時間帯か。充填設備や容器の状態は、どの範囲まで調べたのだろうか。今回確認できた取材報道からは調査の具体的な範囲までは読み取れない。

原因が特定できなかったという理由だけで、メーカーの調査に不備があったと判断することはできない。異物が一つの商品にだけ局所的に存在していた場合、同じロットの保存サンプルに異常が見つからないことも考えられる。反対に、保存サンプルが正常だっただけで、血液が存在した理由まで説明できるわけでもない。

公開情報では詳細を確認できない主な項目

  • 容器・口栓・キャップの詳しい観察結果
  • 異物の採取方法と、検査までの保管履歴
  • 調査対象となった保存サンプルの数量や範囲
  • 対象ロットや充填設備についての具体的な確認内容
  • 血液の由来を調べる追加検査の実施状況

これらは公開資料で確認できない項目であり、ロッテが調査していなかったと断定するものではない。

仮にこうした情報がすべて公開されたとしても、必ず原因が判明するとは限らない。異物の発見から回収までに状況が変化していたり、痕跡が失われていたりすれば、後から調べても経路を一つに絞れない場合がある。血液の正体を調べることと、血液が商品に入った経路を調べることは別の作業なのだ。

クーリッシュの血液異物報告――判明したことと残る疑問

クーリッシュから赤いものが出てきた。調べてもらったところ、血液だった。この話を初めてSNSで見かけたとき、何かの間違いではないかと思った人もいるだろう。赤い着色料ではないのか。写真の見間違いではないのか。食べた際に口の中から血が出ただけではないのか。

しかし、2026年の報告は投稿者が赤いものを見つけたという話だけで終わっていない。ロッテは報道機関の取材に対し、回収した試料を血液と判断したと回答している。その一方、製造工程を調べても、異物がどこから来たのかは特定できなかったという。

過去の投稿を調べると、2022年にも似た報告が二つ見つかった。どちらの投稿者もメーカーの調査で血液だったと説明されたと述べている。さらに2025年12月には、別のアカウントが血のような赤いものを写した写真を公開していた。ただしこちらは血液と確認された検査結果までは見つかっていない。

企業への取材と過去の資料で確認できたこと

今回の調査で最も重要な根拠となるのは、2026年10月9日に報じられたロッテ広報部への取材回答だ。ロッテは回収した試料について血液だったと回答している。さらに製造記録や保存サンプルなどを調べたものの、製造上の問題は確認できず、混入原因は特定できなかったと説明した。少なくとも取材時点では、商品の自主回収を予定していないという。

血液と判断されたことは異物の正体についての結論だが、いつどこから商品に入ったのかという問いにそのまま答えるものではない。また製造記録に異常が見つからなかったことも、血液が存在した理由を説明するものではない。

過去の報告についても同じ慎重さが必要になる。2022年の二つの報告では投稿者がメーカーの検査結果を紹介し、報告書とみられる文書画像も公開していた。ただし、2026年のように今回確認した報道機関がメーカーへ直接取材して回答を得た資料とは証拠の性質が異なる。2025年12月の写真も成分まで判明したわけではない。

似た報告を一つずつ区別すると、単に「何件も血液が混入していた」とまとめることはできない。一方で、異なる時期に複数の投稿が存在し、2026年には企業が血液と回答した事実もある。それらを無視して単なる見間違いの噂として片づけるのも適切ではない。

血液がどこから来たのか――今も残る疑問

製造段階で入ったのか、それとも製造後のどこかの時点だったのか。公開された資料には、そのどちらかを決定づける証拠は確認できなかった。赤い異物の位置も映像に映る色も、混入した時点や場所を示す決定的な証拠ではない。血液検査も物質の性質に関する情報を与えるが、混入経路まで自動的に解決するものではない。

また、原因を想像によって補うべきではないだろう。製造工程に問題があったと決めつけることも、投稿者が意図的に血液を入れたのだと疑うことも、現在の証拠からはできない。ロッテが原因を把握しながら隠していると判断できる資料も見つかっていない。

2022年の投稿者の一人は、3年以上が経過した2025年になっても、当時の出来事について納得できる説明を得られていないと述べていた。血液という検査結果が示されても、その理由が分からなければ、疑問は残り続ける。今回の2026年の件でも、似た状況が生まれている。

2022年から2026年へ。似た報告をたどり、製造工程や血液の性質を調べても、その空白はまだ埋まっていない。

何が入っていたのかは分かった。けれど、なぜそこにあったのかは、まだ分からない。

今回のクーリッシュをめぐる話で、最も奇妙なのは、その部分なのかもしれない。

今回の奇譚を整理すると

今回のクーリッシュをめぐる報告について、現時点で確認できる情報を整理しておこう。

  • 確認できたこと:2026年の件でロッテは回収試料を血液と判断したと回答した。また製造記録などを調査したものの混入原因は特定できなかったと説明している。
  • 過去の報告:2022年の別々の2件と、2025年12月の検査結果未確認の類似報告がある。
  • まだ確認できないこと:血液の由来、混入した時期と経路、過去の報告との共通原因の有無。
  • 今後注目したいこと:追加分析、容器の調査記録、製造・保管履歴、メーカーの新たな説明。

クーリッシュの血液異物報告に関するFAQ

今回の件について、検索されやすい疑問を短く整理した。以下は2026年10月9日の取材報道と、確認できた公開資料に基づく回答である。

クーリッシュから血液が出たという話は本当ですか?

2026年の報告については、ロッテが報道機関の取材に対し、回収した試料を血液と判断したと回答している。ただし、その血液がいつ、どのように商品に入ったのかは特定されていない。

製造中に血液が混入した可能性はありますか?

ロッテは密閉配管や自動充填の仕組みなどから製造時の混入の可能性は極めて低いという見解を示している。ただし混入経路そのものは判明しておらず、製造中だったとも製造後だったとも断定できない。

2022年にもクーリッシュから血液が出たという報告はありましたか?

2022年には別々の投稿者が赤い異物について報告し、メーカーの調査で血液だったと説明されたと述べている。ただし今回は投稿と報告書画像を中心に確認したもので、分析の全工程を第三者が独立して検証したわけではない。

冷凍された血液は、時間が経っても赤いままですか?

血液の色は酸化や温度、保存状態によって変化する。凍結によって変化が遅くなる条件はあるが、凍っていれば必ず赤いままというわけではない。反対に赤く見えるから最近混入したとも判断できない。

2026年の写真は2022年の使い回しだったのですか?

使い回しと断定できる資料は確認できていない。比較できた2022年と2026年の商品写真にはパッケージや構図の違いがある一方、製造番号の正式な読み方や報告書の原本は未確認である。疑惑と検証結果は区別する必要がある。

ロッテはクーリッシュを自主回収する予定ですか?

2026年10月9日の取材時点では、ロッテは製造工程上の問題が確認できていないことから自主回収を予定していないと回答している。最新の対応は変わる可能性があるため、消費者庁のリコール情報などで確認したい。

参考資料・出典

この記事では報道機関による企業への取材、メーカー公式情報、法科学・血液保存に関する研究、SNS当事者による投稿を参照した。SNSに掲載された報告書画像については原本や検査の全工程を独立して確認できたものではない。投稿者が説明した内容と、企業が報道機関へ直接回答した内容を区別している。

企業への取材報道・メーカー公式情報

血液の検査・酸化・冷凍保存に関する研究

食品の自主回収制度・公的情報

X・Threadsの投稿資料

※過去の類似事例には投稿者の説明とSNSに掲載された資料画像に基づくものが含まれる。すべての事例で血液の由来や混入経路が確認されたことを意味しない。

※ロッテの自主回収に関する説明は2026年10月9日時点の取材報道に基づく。公開後に新しい情報が確認された場合は、必要に応じて記事を更新する。

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