うるう秒廃止で時間は速くなる?――「1日16時間」説と、人類が共有する1秒の謎
2026年10月、世界の時計に関わる大きな決定が下された。
地球の自転と世界共通の時刻のずれを調整するため、半世紀以上にわたって使われてきた「うるう秒」。その仕組みを、実質的に廃止するというのである。
このニュースを聞いて、以前からネット上で語られてきた、ある奇妙な話を思い出した。
「昔は24時間あった一日が、今では16時間ほどになっている」
そんな都市伝説をご存じだろうか。
時間が以前より速く流れている。地球の振動数が上がっている。人間には見えないところで、世界そのものに変化が起きている――。
もちろん、うるう秒の廃止は、そのような現象が起きたという発表ではない。それでも、地球の回転と人類の時計との関係が変わると聞けば、どうしても気になってしまう。
そもそも、地球の一日は昔からずっと24時間だったのだろうか。時間が速く感じられるという経験に、科学的な説明はあるのだろうか。そして、私たちが毎日使っている「1秒」は、誰が何を基準に決めているのだろう。
「1日16時間」という噂の古い記録を追いながら、実際の地球自転やシューマン共振の観測研究、うるう秒をめぐる国際的な決定を確かめていく。
すると、都市伝説とは別のところに、思いがけない時間の不思議が見えてきた。
「1日は16時間になった」――時間加速説が描く地球の変化
「最近、時間が過ぎるのが速くなった気がする」。
年齢を重ねれば、誰でも一度くらいはそんな話をしたことがあるかもしれない。仕事をしていたら一日が終わり、週末を迎えたと思ったら、もう月曜日だ。気が付けば一年も残りわずかになっている。
普通なら、忙しさや年齢のせいだと考えるところだろう。
ところが、時間加速説はその感覚を、もっと大きな物語へと広げてしまう。
時間が速く感じられるのは、人間の気分や生活が変わったからではない。地球そのものに何かが起きているのではないか、というのである。
24時間だった一日が、16時間に感じられる?
この都市伝説に登場する、最も印象的な数字が「16時間」だ。
古い言説には、かつての24時間が今では16時間程度に感じられるという主張がある。後年になると、これがさらに踏み込んだ形で語られることもあった。
人間がそう感じるだけではなく、地球の自転が速くなって、一日そのものが短くなったという説明だ。
もしこれが本当なら、たいへんなことである。
学校も仕事も、睡眠も食事も、私たちは一日が24時間あることを前提に生活している。その一日から突然8時間が失われていたとしたら、毎日時間に追われるように感じるのも無理はない。
それなのに、誰も変化に気付いていない。あるいは、気付いていても時計や社会の仕組みがそれを覆い隠している――。
時間加速説には、そんな想像を誘うところがある。
もっとも、「16時間に感じられる」という話と、「実際の地球の一日が16時間になった」という話は同じではない。前者は人間の経験に関する主張だが、後者なら天文学的な観測によって確かめられるはずである。
この違いをいったん覚えておこう。後で古い記録を調べる際にも、重要な手がかりになる。
地球の「振動数」が上がっているという説明
この話には、もう一つ欠かせない要素が登場する。
シューマン共振という現象だ。
時間加速説の一部では、地球にはもともと約7.8Hzの「基本振動数」があり、それが12Hzほどへ上昇していると説明される。
そして、地球の振動数が上がるにつれて時間が速くなり、やがて人間の意識や地球の状態にも大きな転換が訪れるのだという。
こうした話の中には、「ゼロポイント」や「次元の移行」といった言葉が組み合わされるものもある。
地球の磁場が弱まり、何かの転換点を迎える。人間の意識まで変化していく。時間はそれまでとは違ったものになる。
科学の専門用語に、地球規模の変化や人間の意識の話が結び付けられ、壮大な物語が作られているわけだ。
ただし、これらは時間加速説の中で語られている主張であり、ここで述べた因果関係が科学的に確認されているわけではない。
シューマン共振という現象そのものは実在する。だが、その基本周波数が恒久的に12Hzへ上昇し、それに伴って時間の長さが変わったという話は、別に検証しなければならない。
なぜ「時間が足りない」という感覚と結び付くのか
時間加速説の興味深いところは、遠い宇宙や古代文明の話だけで終わらず、私たちの身近な経験へ戻ってくる点だろう。
一日が短い。以前より一年が速く過ぎる。子どもの頃はもっと時間があった気がする。
こうした感覚は、特別な機械で観測しなくても、多くの人が日常の中で経験する。
だからこそ、「もしかしたら、時間そのものが変わったのかもしれない」という説明には、人を引き付ける力がある。
さらに「地球の振動数」という数字が添えられることで、個人的な感覚が、何か大きな自然現象の兆候のように見えてくる。
では、その数字は誰が持ち出したのだろうか。
時間加速説の説明を読み比べると、ある人物の名前が繰り返し登場する。アメリカの著述家、Gregg Braden氏だ。
だが、名前が何度も引用されているからといって、本人がその主張を最初に書いたとは限らない。
そこで次は、「16時間」という数字が残された古い記録を遡ってみよう。
その「16時間」は誰が語り始めたのか――古い記録を遡る
都市伝説の発祥を調べるとき、意外に難しいのが「最初に言ったのは誰か」という問題だ。
同じ文章が別のサイトへ転載され、紹介した人の名前だけが残ることがある。後から解説を書いた人物が、いつの間にか主張の発案者として扱われることもある。
時間加速説も、その例外ではなかった。
「地球の振動数が上がる」「一日が16時間ほどに感じられる」という話を追いかけると、1990年代の関連書籍、2001年の日付を持つ文章、2002年の掲示板投稿へと行き着く。
ただし、古い資料が見つかったことと、発祥が特定できたことは違う。その点に注意しながら、順番に見ていきたい。
1994年の関連書籍と、Gregg Bradenという名前
時間加速説の周辺で、しばしば名前が挙がるのがGregg Braden氏である。
Braden氏は1994年に『Awakening to Zero Point: The Collective Initiation』という著書を刊行している。書名にも、時間加速説の古い言説に登場する「ゼロポイント」という言葉が含まれている。
この書籍の存在自体は、図書館の書誌情報から確認できる。
図書館の書誌目録には、Gregg Braden氏による『Awakening to Zero Point: The Collective Initiation』という書籍の情報が掲載されている。
この資料で確認できるのは、著者・書名・刊行情報などである。「24時間が16時間ほどに感じられる」という一節が、同書の1994年版に収録されているかどうかまでは確認できていない。
※WorldCatの書誌情報を記事用に要約。書籍本文の引用確認ではありません
出典:WorldCat『Awakening to Zero Point』書誌情報
ここが今回の調査で最初に立ち止まったところだった。
「1994年に関連書籍があった」ことは確認できる。しかし、「1994年のその本に16時間説が書かれていた」と言い切るには、該当ページの確認が必要になる。
後年のウェブサイトがBraden氏の名前を挙げていたとしても、それだけで本人の原文を確定することはできない。
では、実際に「16時間」という数字が確認できるのは、いつ頃からなのだろう。
2001年の記録に残された「24時間が16時間に感じられる」という話
古い記録を調べていくと、2001年2月15日の日付を持つ、興味深い文章に行き着く。
現在、その文章を読むことができるのは、L. Oliver Duffy氏の「Schuman Resonance」というページだ。過去のウェブアーカイブから復元された資料で、シューマン共振の周波数が上昇しているという主張に対し、Duffy氏が批判を加えている。
そのページには、メーリングリストを通じて広まったとされる文章が収録されていた。「POSSIBLE OUTCOMES」という見出しの下に、こんな一節がある。
Time will appear to speed up as we approach Zero Point. A 24 hour day will seem to about 16 hours or less.
ゼロポイントへ近づくにつれて時間が速く進むように感じられ、24時間の一日が16時間以下に感じられる――おおむね、そういう意味だ。
この記述で見逃せないのは、「16時間になった」ではなく「16時間ほどに感じられる」と書かれていることだ。
一日の長さが物理的に変わったという話なのか、人間の時間感覚が変化したという話なのか。それによって、確かめるべきものは大きく違ってくる。
もう一つ注意したいのは、この文章が誰のものかという点である。
Duffy氏は、受け取ったメールに含まれる文章をGregg Braden氏らの著述に由来するとされるものとして紹介している。しかし、その帰属を原著との照合によって確定したわけではない。
実際にBraden氏の1994年の著書に、この一節が掲載されていたかどうかは、今回の調査では確認できなかった。
そもそもDuffy氏自身は、シューマン共振が大幅に上昇しているという主張を支持していない。紹介した文章に対して、測定の根拠や信頼性を疑問視しているのである。
したがって、このページは時間加速説の科学的な証明ではなく、そうした主張が流通し、批判の対象にもなっていたことを示す記録として読むべきものだろう。
今回確認できるのは、2001年の日付を伴う言説に、すでに「24時間が16時間ほどに感じられる」という表現があったということまで。それを最初に書いた人物や、文章がどのような経路で広まったのかについては、なお空白が残っている。
2002年、タイムトラベル掲示板に現れた同じ数字
翌2002年にも、似た話がインターネット上に登場している。
記録が残っているのは、Time Travel Instituteという掲示板だ。2002年7月16日付のスレッドには、「Schumann Resonance rise proposed as evidence of shifting timeflow」という題名が付けられている。
日本語にすれば、シューマン共振の上昇が、時間の流れの変化を示す証拠として提案されている、といった意味になる。
そこには、地球の基本周波数が7.8Hzから上昇しているという主張や、ゼロポイントへ向かうにつれて時間が速く感じられるという説明が掲載されていた。
2002年7月16日付の掲示板スレッドには、シューマン共振の周波数が上昇しているという主張とともに、ゼロポイントに近づくと「24時間の一日が16時間ほどに感じられる」という趣旨の文章が掲載されている。
さらに、地球の磁場、磁極の変化、次元の移行、古代の暦など、さまざまな話題が一つの物語として結び付けられていた。
現在のページでは投稿者名が「system」と表示されているが、それだけで当時の実際の投稿者を特定することはできない。また、掲載文章には2001年の日付を持つ言説と共通する部分があり、投稿者が独自に考案した説とは確認できない。
※Time Travel Instituteの2002年7月16日付スレッドを記事用に要約
出典:Time Travel Institute
この掲示板が興味深いのは、主張の真偽とは別に、当時どのような話題と結び付けられていたかが見えることだ。
時間の変化、地球の磁場、タイムトラベル、次元移動。今では別々の都市伝説として語られることも多い要素が、一つの文章の中で顔をそろえている。
こうした組み合わせは、時間加速説が単純な「時計が速くなった」という話ではなく、地球規模の転換を描く物語の一部として流通していたことをうかがわせる。
ただし、2002年の投稿は、少なくとも2002年にはその文章が掲載されていたことを示す資料であって、時間加速説の最初の発信者を教えてくれるものではない。
2003年の「時間が速い」という雑談は、初出の証拠になるか
さらに2003年の掲示板記録にも、時間の経過が以前とは違って感じられるといった話題が見つかる。
ただ、この種の投稿は注意して扱う必要がある。
「最近、時間が速く感じられる」という感想は、それだけなら珍しいものではない。その投稿にシューマン共振や「16時間」という数字が登場していなければ、今回の都市伝説との直接的なつながりを証明することはできない。
時間について同じような感覚が語られていたことと、「1日16時間」説が広まった経路を特定することは、別の問題なのである。
Google Groupsに残る2003年4月30日以降の掲示板記録には、時間の経過が速く感じられるという話題が見られる。
ただし、この資料だけでは、シューマン共振に基づく「1日16時間」説の発信者や、2001〜2002年の資料との転載関係を確認できない。
※2003年の掲示板記録を、時間感覚に関する周辺資料として整理
出典:Google Groups「Jel」
古い資料を多く集めれば、必ず発祥へたどり着けるとは限らない。
むしろ今回の調査では、資料が増えるほど、文章の著者と転載した人物を区別する難しさが見えてきた。
「感じられる」が「実際に短くなった」へ変わるまで
2010年代には、地球の自転が速くなり、一日が16時間になったという主張が、科学的な事実であるかのように紹介される例も見られるようになった。
2019年にはAFPのファクトチェック記事が、この種の主張を検証している。
AFPは2019年12月、地球の自転が速くなったことで一日が16時間へ短縮されたという主張について、事実関係を検証した。
この資料は、少なくとも2019年の時点で、時間加速説が地球自転の変化と結び付けられて流通していたことを示している。
ただし、検証記事は都市伝説の初出を特定する一次資料ではない。
※AFPの2019年12月30日付ファクトチェック記事を要約
出典:AFP Fact Check
2001年の日付を持つ文章には「16時間ほどに感じられる」とある。一方、2019年には「実際の一日が16時間になった」という主張が検証対象になっていた。
この間のどこかで表現が変わったのか。それとも、主観的な時間感覚の説と地球自転の説が、別々に存在しながら結び付いていったのか。
今回確認できた資料だけでは、そこまでの経緯を一本の線でつなぐことはできなかった。
だが、分からないものを無理につなぐ必要もないだろう。
少なくとも「16時間」という数字が2001年の日付を持つ言説に現れ、2002年の掲示板にも掲載され、その後には地球自転の話と結び付けられていた。この足跡を確認できただけでも、都市伝説がどのように語られてきたかを考える手がかりになる。
では、現実の地球はどうなのだろう。
時間加速説が語るほどではなくても、地球の自転速度が変化しているという話自体には、実は観測上の根拠がある。
ここからは古い言説を離れ、実際の測定値を見ていこう。
地球の1日は本当に短くなっているのか――観測が示す答え
「昔の一日は24時間だったのに、今では16時間しかない」。もし本当にそんな変化が起きているなら、地球は以前よりずいぶん速く回っていることになる。
では、実際の観測ではどうなのだろう。調べてみると、少し意外なことが分かる。地球の自転速度は、昔からずっと一定だったわけではない。今この瞬間も、わずかに変動しているのである。
ただし、その変化は時計を眺めていて気付くようなものではない。世界中の観測機関が精密なデータを集め、ようやく捉えられるほど小さなものだ。
それでも、変化を引き起こす要因を調べていくと、地球の内部や海、大気、さらには遠く離れた月や南極の氷まで話が広がっていく。
地球の1日は、いつも24時間ちょうどではない
私たちが普段使う一日は24時間、秒に直せば86,400秒だ。時計も社会の仕組みも、この長さを基準に動いている。
一方、地球の自転に基づく一日の長さは、必ずしも86,400秒ぴったりではない。
ここで少し整理しておこう。地球が遠くの恒星に対して一回転する時間は約23時間56分だが、私たちの一日は、太陽の見かけの動きを基準とする平均太陽日と結び付いている。今回問題にしているのは、この平均太陽日の長さの変動である。
地球を、一定の速さで回り続ける巨大な独楽だと考えると分かりにくい。実際の地球では、大気が流れ、海水が移動し、内部でも物質が動いている。その運動が地球全体の回転に影響するため、自転速度にも小さな揺らぎが生じる。
さらに、月の引力によって生じる潮汐摩擦は、非常に長い期間で見ると地球の自転を遅くする方向に働く。しかし、それより短い期間では、逆に自転が速くなる時期もある。
国立天文台は、地球の自転について、長期的には潮汐摩擦によって遅くなる傾向がある一方、数年から20年程度の期間では、地球内部の核の運動や水の分布変化などに伴って変動すると説明している。
同天文台の解説では、1990年頃の一日は24時間より約2ミリ秒長かったが、2003年頃にはその差が約1ミリ秒となり、比較すると自転が速くなっていた。
※国立天文台の解説を記事用に要約
出典:国立天文台「1日の長さは変化しているの?」
地球の自転は、長期的には減速しながら、その途中で速くなったり遅くなったりしている。矛盾しているように聞こえるが、見ている時間の幅が違うのだ。
2025〜2026年の観測値と「1日16時間」説の大きな隔たり
では、最近の地球はどのくらい速く、あるいは遅く回っているのだろう。
地球の自転をはじめとする観測データを扱う国際地球回転・基準系事業(IERS)の資料からは、平均太陽日が24時間に対して何ミリ秒長いか、短いかを調べることができる。
そのデータを利用するtimeanddate.comの集計によれば、2025年7月10日の一日は、24時間より約1.37ミリ秒短かった。
2026年7月27日にも、約0.66ミリ秒短い一日が記録されている。ところが同年10月23日は逆で、24時間より約1.70ミリ秒長かった。
わずか数か月の間にも、地球の一日は短くなったり長くなったりしているのである。
IERSのデータを利用したtimeanddate.comの集計では、2025年7月10日の一日は24時間より約1.37ミリ秒短かった。
2026年10月26日時点の年間一覧では、同年7月27日の一日が約0.66ミリ秒短く、10月23日は約1.70ミリ秒長い日と示されている。2026年の数値は、今後の観測データの更新によって修正される可能性がある。
これらは地球の平均太陽日の長さと、86,400秒との差を示すものである。
※IERSのデータを利用するtimeanddate.comの集計を記事用に要約(2026年10月26日確認)
出典:timeanddate.com「How Long Is Today?」
ミリ秒は、1秒の1000分の1だ。2026年7月27日の0.66ミリ秒を秒に直せば、わずか0.00066秒になる。
一方、時間加速説のいう「24時間が16時間になった」という変化は、8時間、つまり28,800秒もの差だ。この二つには、約4,400万倍もの開きがある。
しかも、0.66ミリ秒という数字は、その日に観測された一日の長さと24時間との差であって、毎日それだけ短くなっていくという意味ではない。
仮に地球の一日が本当に16時間になっていれば、太陽の見かけの動きや天体観測、人工衛星の運用などに、誰も見逃せないほど大きな変化が生じるだろう。しかし、現在の観測はそのような事態を示していない。
地球の回転速度が変化していることは事実だが、それは「一日16時間」説を裏付けるものではない。
地球の内部、大気、海洋が自転を変える
それにしても、これほど巨大な地球の回転が、大気や海の動きに影響されるというのは不思議な話だ。
理由の一つは、回転する物体が持つ角運動量にある。地球全体で考えれば、大気や海洋も回転する地球の一部であり、それぞれの動きが変われば、地球のほかの部分との間で角運動量のやり取りが起こる。
地球内部の液体状の外核も、静止しているわけではない。地殻やマントルと核の運動が、より長い期間の自転変動に関係していると考えられている。
身近な例を挙げるなら、フィギュアスケートの選手が回転するときの動きに少し似ている。腕を広げると回転が遅くなり、身体へ引き寄せると速くなる。質量の分布が変わると回転に影響する、という点は共通している。
ただし、地球の自転変動は、その例だけで説明できるほど単純ではない。大気や海洋との角運動量の交換、内部の核の動き、月や太陽による潮汐、地表にある水や氷の分布変化などが重なっている。
私たちが立っている足元の地球は、見た目ほど変わらないものではないらしい。
2026年の研究が示した、約70年周期の自転変動
その複雑な変化を長い時間の幅で調べた研究が、2026年9月28日に『Earth, Planets and Space』へ掲載された。
論文の題名は「An approximately 70-year core-related modulation of Earth rotation and its implications for the leap second」。地球内部の核と関連する、約70年周期の自転変動を扱った研究だ。
研究チームは、1883年から2022年までの資料をもとに、地球の一日の長さを表すLODと、地磁気データから推定される核の角運動量との関係を調べた。
Zhang氏らの研究チームは、1883〜2022年の共通期間について、地球の一日の長さ(LOD)と、地球内部の核の角運動量に対応するLODの変化を解析した。
潮汐や大気・海洋などの寄与、長期的な変化をモデルによって取り除いた結果、LOD側には約69.7年、核の角運動量から推定した系列には約71.8年の周期成分が見られた。その振幅は、それぞれ約2.87ミリ秒、約1.94ミリ秒と推定された。
この結果は、核の運動と地球自転の数十年規模の変化に関連がある可能性を支持する。ただし、具体的な物理機構の特定や、将来の自転速度の確実な予測まで示したものではない。
※Zhangほか(2026)の査読論文を記事用に要約
出典:Earth, Planets and Space(2026年9月28日)
約70年という周期は、人間の一生にも近い。地球の内部で起きている変化が、これほど長い時間をかけて自転へ現れている可能性があるというのは、それだけで興味をそそられる。
もちろん、「70年ごとに地球が急加速する」と受け取ってはいけない。研究が見つけたのは、さまざまな影響を取り除いた観測系列に含まれる周期的な成分である。しかも、解析期間は約70年周期の二回分程度に限られ、地球内部の動きを推定するモデルにも不確実性が残る。
それでも、数千キロメートルも地下にある核の運動と、地表で測る一日の長さとが結び付いているかもしれない。都市伝説とは別のところに、十分に不思議な話がある。
氷床融解までが地球の回転に影響する
地球の自転を変えるものは、地下深くにあるとは限らない。グリーンランドや南極の氷も、その一つである。
2024年3月、カリフォルニア大学サンディエゴ校のDuncan Carr Agnew氏は、『Nature』に「A global timekeeping problem postponed by global warming」という論文を発表した。
氷床が融け、そこにあった水が海へ移ると、地球上の質量の分布が変わる。回転している地球にとって、その変化は無関係ではない。
Agnew氏は、衛星による重力観測などを利用して、極域の氷床融解が地球の自転と時刻調整に与える影響を調べた。
研究によれば、グリーンランドや南極の氷床融解の加速は、地球の自転を遅くする方向に作用している。その影響がなければ、当時のモデルでは負のうるう秒が必要になる時期が約3年早まっていたと推定された。
論文は、2024年当時の制度が続く場合、2029年までに負のうるう秒が必要になるという予測を示していた。ただし、その後の2026年にUTCの新しい運用が決まったため、この予測を2029年の実施予定と受け取ることはできない。
※Agnew(2024)の査読論文を記事用に要約
出典:Nature(2024年3月27日)
氷が融けることで、海面だけでなく地球の回転にも影響が現れる。普段は結び付けて考えない二つの現象が、実は同じ惑星の上でつながっていたわけだ。
しかも、地球内部の動きには自転を速くする方向の作用があり、氷床融解による質量分布の変化には遅くする方向の作用がある。観測される一日の長さは、そうした異なる要因が重なった結果である。
「地球は最近速く回っている」というニュースがあったとしても、それだけで今後も加速し続けるとは言えないし、一日が16時間になったという話へつなげることもできない。
ただ、時間加速説には、地球の自転とは別に、もう一つの説明が登場する。
地球の「振動数」が高くなっている、という話だ。
その根拠として持ち出されるシューマン共振は、確かに実在する現象である。では、その周波数は本当に7.8Hzから12Hzへ上昇したのだろうか。
シューマン共振は本当に上昇したのか――地球の「振動」を調べる

時間加速説を調べていると、繰り返し登場する数字がある。7.8Hzと12Hzだ。
地球の振動数が以前は7.8Hzだったのに、今では12Hzへ上昇している。その変化によって時間の流れまで速くなった、という説明である。
もし本当なら、地球そのものに大きな変化が起きているように聞こえる。
もっとも、この話は単なる架空の言葉だけで組み立てられているわけではない。シューマン共振という現象自体は、実際に存在する。しかも2026年には、その周波数が変動する仕組みを扱った研究が発表されていた。
では、都市伝説に登場する「地球の振動」は、研究者たちが測っているものと同じなのだろうか。
シューマン共振とは何か――地球を取り巻く電磁波の共振
世界のどこかで雷が落ちると、光や音とともに電磁波が発生する。
その電磁波の一部は、地球の表面と上空の電離層に挟まれた空間を伝わる。この空間では、地球の大きさや電離層の電気的な性質に応じて、特定の周波数の電磁波が共振しやすくなる。
これがシューマン共振だ。
地球を取り巻く空間が、巨大な共鳴装置のように働くと考えれば、イメージしやすいかもしれない。ただし、地面そのものが一秒間に何回も膨らんだり縮んだりしているわけではない。実際に観測されるのは、地表と電離層の間の電磁場の振る舞いである。
世界各地では常に雷が起きているため、シューマン共振は継続的に観測できる。その記録は、地球規模の雷活動や電離層の状態を調べる手がかりにもなる。
雷が影響を与えるのは、私たちが見慣れた雷雲の周辺だけではない。雷活動に伴って、はるか上空に赤い巨大な発光が現れる「スプライト」という現象もある。
シューマン共振とは異なる現象だが、雷による電気的な変化が思いがけない場所へ及ぶという点では、同じ地球の大気が見せる不思議な一面だ。2026年に神奈川県平塚市から撮影された実例をもとに、夜空に現れた「赤い巨大クラゲ」の正体を別の記事で詳しく調べている。
地球の「心臓の鼓動」といった表現で紹介されることもあるが、科学的には大気電気学や地球物理学で研究されている自然現象だ。
7.8Hzだけではない――複数の共振モードが存在する
シューマン共振といえば7.8Hz、という説明を目にすることが多い。この付近に現れるのは基本モードと呼ばれる共振で、確かに代表的なものだ。
しかし、シューマン共振の観測スペクトルには、それより高い周波数帯にもピークが現れる。約14Hz、20Hz、26Hzといった高次モードが知られており、7.8Hzだけが存在するわけではない。
そのため、観測画面に12Hzや14Hz付近の信号が映っていても、それだけで基本モードが7.8Hzから上昇したことにはならない。別のモードや別の信号を見ている可能性も考える必要がある。
もう一つ、混同されやすいものがある。周波数と振幅だ。
周波数は一秒間に何回振動するかを表し、振幅は振動の大きさに関係する。ある周波数帯で信号が強くなったとしても、共振の周波数そのものが大きく変わったとは限らない。
しかも、実際の観測では、共振のピークが見える位置も一定とは限らない。雷の多い地域と観測地点の位置関係、電離層の状態、電磁波が伝わる経路などが、測定結果に影響するからだ。
つまり、「シューマン共振が上がった」という言葉だけでは、何が変わったのか判断できないのである。
1994〜2009年の16年間を調べた2026年の研究
基本モードの周波数は、長い期間でどのように変化してきたのだろう。
この疑問に関係する研究が、2026年3月に『Journal of Atmospheric Electricity』へ掲載された。Alexander Nickolaenko氏、芳原容英氏、早川正士氏らによる、基本シューマン共振周波数の長期変動を扱った論文だ。
研究チームが利用したのは、ハンガリーのナジツェンクにある観測所で記録されたデータだった。対象期間は1994年1月から2009年12月までの192か月、ちょうど16年間である。
2026年に発表された研究ではあるが、2026年現在の周波数を測ったものではない。過去の長期観測を詳しく解析することで、周波数がどのような周期で変化していたのかを調べた研究だ。
Nickolaenko氏らは、ハンガリーのSzéchenyi István Geophysical Observatoryで記録された1994年1月〜2009年12月の鉛直電場データを用い、基本シューマン共振周波数の変化を解析した。
192か月の記録へ特異スペクトル解析(SSA)を適用した結果、毎年繰り返される季節的な変動と、年をまたぐ変動成分が見つかった。
研究チームは、季節的な変動の主な理由について、地球と太陽の距離の変化ではなく、地球の地軸の傾きに伴って、雷活動の中心が南北に移動することだと解釈している。
この研究は、基本周波数が7.8Hzから12Hzへ一方向に上昇し続けたと報告したものではない。
※Nickolaenko・Hobara・Hayakawa(2026)の査読論文を記事用に要約
出典:Journal of Atmospheric Electricity、第45巻(2026年)
この結果が興味深いのは、シューマン共振の変化が、地球の季節や雷の活動と結び付いていることだ。
世界中の雷は、一年を通じて同じ場所で同じように発生しているわけではない。季節が移り変われば、雷の多い地域も変化する。その影響が、遠く離れた観測所で測る電磁波の記録に現れているというのである。
地球を取り巻く共振が変化しているのは確かだとしても、そこから直ちに「地球全体が時間を速めている」と考える必要はない。
むしろ、雷と電離層の関係を通じて、地球規模の環境の変化が読み取れるところに、この現象の面白さがある。
2026年10月の研究――太陽風でも周波数がわずかに変わる
地上の雷だけではない。太陽から地球へ流れてくる荷電粒子、いわゆる太陽風も、シューマン共振の観測結果と関係しているらしい。
2026年10月10日、『Earth and Space Science』に、J. Tacza氏らによる研究が発表された。高速太陽風が繰り返し到来した後、シューマン共振の周波数にどのような変化が起きるのかを調べたものだ。
研究チームは2005年11月から2024年6月までのデータから、高速太陽風に関連する173件の事象を抽出した。そして、スバールバル諸島のホルンスンド、フィンランドのイヴァロとロヴァニエミという三つの観測地点の記録を比較した。
ただし、173件すべてが各解析に使われたわけではない。観測条件や解析方法によって、実際に利用できる事象の数は異なっている。
Tacza氏らは、高速太陽風に関連する173件の事象を抽出し、その前後におけるシューマン共振の基本モードの変化を、北極圏の3観測地点で解析した。
ホルンスンド観測点では、ローレンツ関数を用いたピーク周波数の推定に条件を満たした120件を使い、平均約0.0586Hzの上昇が得られた。同地点で周波数の加重平均を使った解析では、約0.0248Hzの上昇だった。
ほかの2地点でも、同じ方向の小さな変化が報告された。周波数の変化は太陽風の速さそのものより、地磁気活動の強まりとの関係が明瞭だった。
ただし、研究が示したのは、高速太陽風の到来に関連した観測ピーク周波数の小さな変化である。電離層の状態や電波の伝搬条件、雷の位置関係などの影響を完全に切り分けたものではない。
※Taczaほか(2026)の査読論文の研究方法・結果・限界を記事用に要約
出典:Earth and Space Science(2026年10月10日)
ここで「周波数が上昇した」という部分だけを取り出せば、時間加速説と似た話に聞こえるかもしれない。
しかし、数字を比べると意味が違ってくる。
ホルンスンドで報告された約0.0586Hzという変化は、7.8Hzを基準にすると約0.75%だ。一方、7.8Hzから12Hzへの上昇なら、約54%もの変化になる。
しかも、研究で扱っているのは太陽風の到来に関連した一時的な応答であり、地球全体の基本共振周波数が恒久的に12Hzへ移ったという現象ではない。
周波数が実際に変動するという点は、都市伝説にも科学にも共通している。けれども、その規模と意味はまったく異なっていたのである。
太陽風が地球周辺の磁気環境へ影響を与え、その変化が地表と電離層の間の電磁波にも現れる。むしろ、こちらの方が十分に不思議な話ではないだろうか。
「振動数が上がる」と「時間が速くなる」は別の話
ここまで調べてきたことを整理すると、シューマン共振は確かに変動している。ただし、研究者たちが扱っているのは、雷活動や電離層、地磁気活動などと関係する電磁波の共振である。
そこで最後に、もう一つだけ確認しておきたい。
仮にある電磁波の周波数が高くなったとして、それは時間そのものが速くなったことになるのだろうか。
そもそもHz(ヘルツ)は、一秒間に何回振動するかを表す単位だ。7.8Hzなら一秒間に7.8回、12Hzなら一秒間に12回という意味になる。
つまり、周波数は時間間隔を使って表している量である。ある現象の振動回数が増えたからといって、あらゆる時計が刻む一秒の長さまで短くなるわけではない。
まして、シューマン共振の周波数から「地球の一日は16時間になった」と計算できるような、科学的に確立された関係式はない。
これまでの観測研究も、シューマン共振の変動が世界中の時間間隔を短くしたという証拠を示してはいない。
だからといって、「最近、時間が速く感じられる」という経験まで否定する必要はないだろう。
退屈な会議では一時間が長く感じられ、好きなことをしているときには驚くほど短く感じられる。子どもの頃の夏休みを思い出して、昔はもっと時間がゆっくり流れていたように思う人もいる。
それは、地球の共振が時間を縮めているからなのだろうか。それとも、時間を感じている私たち自身に理由があるのだろうか。
次は地球を取り巻く電磁波から少し離れ、人間が感じる「時間の速さ」を考えてみよう。
なぜ大人になると時間が速く感じるのか――もう一つの「時間加速」

子どもの頃の夏休みは、どうしてあんなに長かったのだろう。
朝から外で遊んで、昼ご飯を食べて、午後もまだたっぷり時間がある。夕方になって家へ帰っても、夏休みそのものはなかなか終わらない。そんな記憶を持っている人もいると思う。
ところが大人になると、月曜日だったはずが、もう金曜日だ。年が明けたと思えば桜が咲き、暑い暑いと言っているうちに、いつの間にか年末が近づいている。
もちろん、誰もが同じように感じるわけではない。それでも「昔より時間が速く過ぎる」という感覚には、思い当たるところがあるのではないだろうか。
ここまで調べてきた地球の自転やシューマン共振は、物理的な一日が16時間になったという証拠にはならなかった。しかし、時間が速く感じられるという経験まで、間違いだと決めつける必要はない。
そもそも私たちは、時計と同じ方法で時間を感じ取っているわけではないからだ。
年齢を重ねるほど、時間は速く感じられるのか
この疑問を調べた研究の一つが、2005年に発表された「Age effects in perception of time」だ。
心理学者のMarc Wittmann氏とSandra Lehnhoff氏は、14歳から94歳までの499人を対象に、時間の経過をどのように感じているかを調査した。
質問は、目の前の時間がどれほど速く過ぎるかということだけではない。過去の一週間や一か月、一年などを振り返ったとき、その期間がどれくらい速く過ぎたように感じられるかも調べている。
結果は、年齢を重ねると時間が速く感じられるという、よく知られた話をある程度支持するものだった。ただし、この研究を詳しく読むと、年齢だけですべてを説明することはできないと分かる。
Wittmann氏とLehnhoff氏は、14〜94歳の499人を対象に、現在の時間の経過感覚と、過去の期間を振り返ったときの評価を調べた。
分析では、年齢と時間の経過感覚との間に関連が認められたものの、効果の大きさは小〜中程度だった。年齢によって説明できた個人差の割合は、最大でも10%にとどまっていた。
研究者らは、年齢との関連を認めながらも、その解釈には方法論上の注意が必要だとしている。
※Wittmann・Lehnhoff(2005)の研究を記事用に要約
出典:Psychological Reports「Age effects in perception of time」
最大10%という結果は、なかなか興味深い。年齢が関係しているとしても、時間の感じ方の個人差には、ほかにも多くの要因があるということだからだ。
考えてみれば、同じ年齢の人でも、長く感じた一年と短く感じた一年は違うだろう。自分自身を振り返っても、忙しかった時期や何かに夢中になっていた時期は、いつもと時間の流れ方が違って思えることがある。
では、その違いはどこから来るのだろうか。
退屈な一時間は長く、楽しい一時間は短い
待ち合わせの相手が来ないとき、時計を何度も見てしまうことがある。
まだ五分しか経っていないのかと思って少し待ち、再び時計を見ると、今度は二分しか進んでいない。普段なら気にも留めない数分が、妙に長く感じられる。
ところが、好きな映画を観たり、趣味に熱中したりしていると、気付かないうちに一時間が過ぎている。
時計が刻んだ時間間隔は同じなのに、体験した長さはずいぶん違う。このような時間感覚には、何に注意を向けていたのか、どんな感情を抱いていたのかといった要因が関わると考えられている。
2022年に公開された時間知覚研究では、数秒から数分程度の時間について、参加者が感じた長さや、時間が進む速さの評価を調べた。
分析では、時間の進み方についての評価と、退屈さなどの感情との関連が報告されている。また、経過時間の長さを判断する場合には、時間へ注意を向けていたかどうかや、判断対象の長さによって関係する要因が異なっていた。
この研究は、日常の一時間や人生全体の時間感覚を直接説明するものではないが、主観的な時間が注意や感情と無関係ではないことを示している。
※2022年公開の時間知覚研究を記事用に要約
出典:時間の長さと経過感覚を扱った研究
ただ、ここでもう一つ考えたいことがある。
楽しい旅行をしている最中は、時間があっという間に過ぎたように感じる。けれども、帰宅して写真を見返すと、たった数日とは思えないほど多くの出来事があったようにも感じられる。
これは矛盾しているのだろうか。
過ごしている時間と、思い出す時間は違う
時間の感じ方を調べる心理学では、時間が過ぎることをあらかじめ意識して判断する場合と、後になって長さを振り返る場合を区別する。
前者は「予期的な時間判断」、後者は「回顧的な時間判断」と呼ばれている。
時間を気にしながら待っている場合には、経過時間そのものへ意識が向きやすい。一方、何かを経験した後にその長さを思い出す場合には、記憶に残った出来事が判断の手がかりになると考えられている。
Richard A. Block氏とDan Zakay氏は、1997年のメタ分析で、時間の長さを事前に意識して判断する条件と、終了後に振り返って判断する条件を比較した。
20件の実験をまとめた結果、事前に時間を意識している条件では、回顧的な条件に比べて、平均して長く、ばらつきの小さい時間評価が行われていた。
研究者らは、予期的な判断には時間への注意が、回顧的な判断には記憶に残った情報が重要な役割を果たすと論じている。
※Block・Zakay(1997)のメタ分析を記事用に要約
出典:Psychonomic Bulletin & Review「Prospective and retrospective duration judgments」
この違いを知ると、子どもの頃の夏休みが長かった理由についても、少し違う見方ができる。
初めて経験したこと、友達と出掛けたこと、夢中になった遊び。そうした出来事がたくさん記憶に残っていれば、後から振り返ったときの夏休みも、長く豊かなものとして思い出されるかもしれない。
もちろん、「新しい経験の数が減るから、大人の時間は必ず速くなる」とまでは言えない。年齢、記憶、注意、感情は、それぞれ複雑に関わっているからだ。
それでも、今まさに感じている時間と、記憶の中に残る時間とが、同じものではないという指摘は、私たちの経験によく合っているように思う。
「時間が速い」という感覚は、間違いなのだろうか
結局のところ、時間が速く感じられるのは気のせいなのか。そう聞かれると、少し答えに困る。
時計が測る時間間隔が短くなったわけではない、という意味では、その通りかもしれない。しかし、その人が時間を短く感じた経験まで、なかったことにする必要はないだろう。
心理学が調べているのは、まさにその違いである。
時間加速説が広まった背景にも、こうした身近な経験が関わっていたのかもしれない。ただし、これは人々が噂に関心を持った理由についての一つの解釈であって、都市伝説の成立過程を証明するものではない。
時間の感じ方をめぐる不思議は、別の都市伝説にも登場する。東京・下北沢には、いつもの街を歩いていたはずが、まるで昭和へ迷い込んだような体験をしたという話がある。
実際に時間移動が起きたと確認できる証拠はないものの、体験談がどのように広まったのかを追ってみると、街の記憶と時間の感覚が交わる、興味深い物語が見えてくる。下北沢タイムリープの噂と、その形成史を追った記事で詳しく紹介している。
物理的な時間間隔と、私たちが感じる時間。両者を分けて考えてみると、「時間が速くなった」という同じ言葉でも、ずいぶん違う話をしていることが分かる。
さて、ここまで見てきたのは、人間が感じる時間の方だった。では、私たちが毎日頼りにしている時計はどうだろう。
現代社会では、離れた場所にあるコンピューター同士が、正確な時刻を共有する必要がある。ところが、地球の自転へ時刻を合わせるために設けられた「うるう秒」は、過去にその仕組みを混乱させたことがあった。
しかも問題になったのは、わずか1秒である。
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たった1秒でDNS障害が起きた――うるう秒はなぜ廃止されるのか
2017年1月1日。世界各地で新年を迎えていた頃、インターネットを支えるCloudflareのシステムでは、奇妙な計算結果が生まれていた。
処理にかかった時間が、マイナスになってしまったのだ。
コンピューターが処理時間を調べるとき、開始時刻と終了時刻の差を計算することがある。ところがこのときは、時計の値が後戻りしたため、終了した時刻の方が開始時刻より前になってしまった。
原因は、2016年の最後に挿入された、たった1秒の調整にあった。
地球の自転に基づく時刻と、原子時計を基礎とする世界共通の時刻とのずれを小さくする「うるう秒」。天文学と日常の時刻を結び付けてきた仕組みだが、現代のコンピューターにとっては、なかなか厄介な存在でもあった。
2017年、CloudflareのDNSで何が起きたのか
Cloudflareは、ウェブサイトの通信やセキュリティーを支えるさまざまなサービスを提供している企業だ。その一つがDNSである。
私たちがブラウザーへウェブサイトの名前を入力すると、コンピューターは接続先を調べる。DNSは、その名前から必要な情報を探す仕組みだ。
2017年1月1日午前0時(UTC)、Cloudflareの一部のDNS処理で障害が発生した。同社の報告によれば、接続先を調べる処理にかかった時間を測定する部分に問題があったという。
うるう秒への対応で時計の値が後戻りし、経過時間の計算結果が負の値になった。ところがプログラムは、そのような値が現れることを想定していなかった。
しかも、その値は複数の接続先の性能を比較する処理にも使われていたため、一部のDNS問い合わせが失敗する結果になった。
Cloudflareは2017年1月1日、うるう秒に伴う時刻の後戻りにより、同社のDNS処理の一部に障害が発生したと公表した。
RRDNSというソフトウェアでは、処理時間が負になる場合が考慮されておらず、接続先を選ぶ計算に不正な値が渡されたことで、一部のDNS問い合わせが失敗した。
影響を受けたのは主に、CloudflareでCNAMEレコードを利用していた顧客の一部だった。ピーク時に影響を受けたのは同社へのDNS問い合わせの約0.2%で、HTTPリクエスト全体への影響は1%未満だったと報告されている。
問題の特定後、影響の大きかった設備への修正には約90分を要し、世界各地への修正展開は同日06時45分(UTC)までに完了した。
※Cloudflareの2017年1月1日付障害報告を記事用に要約
出典:Cloudflare公式ブログ
インターネット全体が止まったわけではない。影響の範囲は限定されていた。それでも、世界規模のネットワークを運営する企業で、時刻の調整を原因とする障害が発生したことは見過ごせない。
Cloudflareの公式報告には、この事故を象徴する一文がある。
The root cause of the bug that affected our DNS service was the belief that time cannot go backwards.
不具合の根本原因は、時刻は後戻りしないという思い込みだった、という意味だ。
普段、時計の針が逆戻りすることは考えない。しかし、コンピューターが参照する時刻は、同期や修正の方法によって飛んだり、後戻りしたりする場合がある。
もちろん、物理的な時間が逆流したわけではない。問題になったのは、時刻を表す数値と、その数値を利用するプログラムの設計だった。
2012年にも起きていた――Linuxやウェブサービスへの影響
実は、うるう秒を原因とするシステム障害は、2017年が初めてではない。
2012年6月30日の終わりにうるう秒が追加された際にも、Linuxを利用する一部のシステムで不具合が起き、ウェブサービスにも影響が出た。
問題となったものの一つが、高精度タイマーの処理だった。コンピューターは、一定の時間だけ待ってから処理を再開したり、別の仕事へ切り替えたりする。ところが、うるう秒による時刻の更新がタイマーへ適切に反映されず、処理が異常に繰り返される場合があった。
その結果、一部のサーバーではCPUの使用率が急上昇した。
Red Hatの不具合管理記録には、2012年6月末のうるう秒の後、一部のLinux環境でfutexに関係するタイマーの問題が発生し、CPU負荷が著しく上昇したことが残されている。
開発者らは、うるう秒に伴う時計の変更が高精度タイマーへ適切に通知されなかった問題を調査し、修正プログラムを作成した。
この障害は、すべてのLinuxシステムで一律に発生したものではなく、利用していたカーネルや処理の条件によって影響が異なっていた。
※Red Hatの障害記録と関連する修正情報を記事用に要約
出典:Red Hat Bugzilla #836803
一般利用者向けのサービスにも影響は及んだ。例えば掲示板サービスRedditでは、うるう秒に関係する問題により、約30〜40分間サービスが利用できなくなったと、後にMetaの技術チームが振り返っている。
Metaの技術チームは2022年7月、うるう秒の廃止を支持する理由を説明する記事を公開した。
その中で2012年のRedditの障害を紹介し、Linuxの高精度タイマーに関連した問題でCPU負荷が高まり、サービスに影響が出たことを振り返っている。
また、2017年のCloudflare障害も取り上げ、時刻が常に前進することを前提とした設計の危うさを指摘した。
※Meta Engineeringの2022年7月25日付記事を要約
出典:Meta Engineering
人間なら、時計が1秒ずれたところで、普段は気付かない。しかしコンピューターでは、別の装置と処理の順番を合わせたり、出来事の発生時刻を記録したりするために、精密な時刻情報が必要になる。
そこで、うるう秒に対応する方法もさまざまに考えられてきた。特定の瞬間に1秒を挿入するのではなく、長い時間をかけて時計の進み方を少しずつ変える方法もある。
ただし、すべてのシステムが同じ方法で調整するとは限らない。ある機器は一瞬で時計を変え、別の機器はゆっくり修正するとなれば、両者が一時的に異なる時刻を示す可能性がある。
地球の回転に世界共通の時刻を合わせるための仕組みが、かえって時刻の共有を難しくしていたわけだ。
まだ一度も実施されていない「負のうるう秒」
これまで実施されてきたうるう秒は、いずれも1秒を追加する「正のうるう秒」だった。
しかし近年、地球の自転が比較的速くなった時期があったことから、逆に1秒を取り除く「負のうるう秒」が必要になる可能性が議論されるようになった。
そもそも従来のうるう秒制度は、地球の自転に基づく時刻UT1と、協定世界時UTCとの差を0.9秒以内に保つためのものだった。
その差がどちらの方向へ広がるかによって、1秒を追加する場合も、削除する場合も考えられる。
ところが、1972年に運用が始まって以来、負のうるう秒は一度も実施されていない。すでに障害を引き起こしてきた「1秒を追加する」処理とは異なり、実際の運用経験がない調整なのである。
2025年3月、国際度量衡局(BIPM)の時間・周波数諮問委員会と国際地球回転・基準系事業(IERS)の専門家らは、この問題を検討した。
その結果、2035年までに負のうるう秒が必要になる確率は、約30%と見積もられた。
2026年の第28回国際度量衡総会・決議5には、2025年3月のCCTFとIERSによる専門家会議の検討結果が記されている。
会議では、2035年までに負のうるう秒が必要になる確率が約30%と推定された。
決議は、負のうるう秒がこれまで実施されたことのない調整であり、重要な社会基盤に異常や障害をもたらす危険があることも指摘している。
※2026年第28回国際度量衡総会・決議5を記事用に要約
出典:BIPM「Resolution 5 of the 28th CGPM」
もちろん、約30%という見積もりは、2035年に必ず負のうるう秒が必要になるという意味ではない。地球の自転を将来にわたって正確に予測することは難しく、不確実性を伴った評価だった。
ただ、これまでに経験したことのない処理へ、世界中の重要なシステムを対応させる必要が生じるかもしれない。その懸念が、制度を見直す理由の一つになった。
2022年、国際社会はうるう秒の見直しを決めていた
2026年のうるう秒廃止決議は、突然出てきた話ではない。
すでに2022年11月、第27回国際度量衡総会では、UTCの運用を見直す方針が決まっていた。
背景には、時刻の不連続な調整が通信網や衛星測位、電力供給などに影響するという懸念があった。異なる事業者が、それぞれ違う方法でうるう秒に対応していることも問題視されていた。
2022年の第27回国際度量衡総会では、うるう秒によるUTCの不連続性が、衛星測位、通信、電力などの社会基盤へ問題を起こす危険があると指摘された。
同決議は、UT1とUTCの差について、最大許容値を2035年までに拡大する方針を採択。具体的な許容値と実施計画を検討し、2026年の総会へ提案するよう求めた。
※2022年第27回国際度量衡総会・決議4を記事用に要約
出典:BIPM「Resolution 4 of the 27th CGPM」
地球の自転は、完全に一定ではない。それでも世界中の時計を細かく自転へ合わせ続けようとすれば、どこかで調整が必要になる。
しかし、現代社会では、その調整のために時刻が不連続になることの方が、大きな問題になっていた。
そこで国際社会は、地球の自転との差をこれまでより大きく許容し、UTCを連続して利用しやすくする方向を選んだのである。
2026年の正式決議――2027年から何が変わるのか
そして2026年10月15日、フランス・ベルサイユで開かれた第28回国際度量衡総会で、決議5が採択された。
内容は、2027年5月20日から、UT1とUTCとの差を最大3,600秒まで許容するというものだった。
3,600秒は1時間に相当する。これまでの0.9秒という許容範囲から、大幅に拡大されることになる。
日本の情報通信研究機構(NICT)も同年10月23日、この決定を「うるう秒の実質的な廃止」として発表した。
NICTは2026年10月23日、第28回国際度量衡総会において、2027年5月20日からUT1とUTCとの差を最大3,600秒まで許容する決議が採択されたと発表した。
これによって、少なくとも今後数世紀にわたり、UTCへうるう秒のような不連続な調整を加える必要はなくなる見込みとされている。
ただし、うるう秒の実施は国際電気通信連合(ITU)の勧告に基づいているため、関連勧告の改定が今後の作業として残っている。
※NICTの2026年10月23日付公式発表を記事用に要約
出典:情報通信研究機構(NICT)
では、2027年5月20日になった瞬間、私たちの時計が1時間ずれるのだろうか。
もちろん、そうではない。3,600秒というのは、UTCと地球の自転に基づく時刻との差について定めた最大許容値である。
その日から時計を1時間進めたり、1秒の長さを変えたりする決定ではない。また、将来必ず「うるう時間」として1時間分の調整を実施すると決めたものでもない。
今後も天文学や測地学などでは、地球の自転を正確に把握する必要がある。UT1の観測やUTCとの差の把握が不要になるわけではない。
変わるのは、地球の不規則な回転を、世界共通の時刻へ頻繁に反映させる必要がなくなるという点だ。
では、地球の自転に細かく合わせなくなった時計は、何を基準に一秒を刻んでいるのだろう。
考えてみれば、私たちは毎日「一秒」という言葉を使いながら、その長さが何によって決められているのか、ほとんど意識していない。
地球が不規則に回るのに、なぜ世界は同じ「1秒」を刻めるのか
地球の回転は、精密な時計として考えると少々頼りない。
自転速度は日によってわずかに変動し、長い年月の間にも変化している。それなのに、世界中の時計は同じ「1秒」を基準に動き、離れた場所にあるコンピューター同士も、正確な時刻を共有できている。
なぜ、そんなことが可能なのだろう。
その答えを考えるには、まず「時間」という言葉を少し整理する必要がある。私たちは普段、時間、時刻、時計、暦といったものを、ごく自然に使い分けているつもりで、意外と混同しているからだ。
「時間」「時間間隔」「時刻」「時計」は同じものではない
例えば、午後3時に駅で待ち合わせるとしよう。
午後3時は、ある出来事がいつ起きるかを示す「時刻」である。一方、家から駅まで歩くのに15分かかるという場合、その15分は出発から到着までの「時間間隔」だ。
時計は、規則的に繰り返される現象を利用して時間間隔を測り、定められた基準に従って時刻を表示する道具。そして、日付や月、年を整理する仕組みが暦である。
こうした違いは、普段の生活ではあまり意識しなくても困らない。けれども、うるう秒や時間加速説のような話になると、何が変わると主張されているのかを見極めるために重要になる。
そもそも、時間の本質が完全に解き明かされていなくても、二つの出来事の間隔を測ることはできる。
砂時計は砂が落ちる現象を利用する。振り子時計は振り子の周期的な運動を利用し、水晶時計は水晶振動子の規則的な振動を数える。
問題は、その基準がどれだけ安定しているかだ。地球の自転も長く時間の基準として使われてきたが、精密な測定には小さな揺らぎが無視できなくなった。
地球の一日から原子へ――「1秒」の基準が変わった理由
昔の秒は、地球の回転と直接結び付いていた。
平均的な太陽の動きに基づく一日を24時間に分け、それぞれを60分、さらに60秒へと分けていく。こうして考えれば、1秒は平均太陽日の86,400分の1に相当する。
日常生活には分かりやすい基準だが、科学技術が発展し、より精密な時間間隔を測るようになると問題が見えてきた。基準にしている地球の回転が、完全には一定ではなかったのである。
そこで秒の定義は、より安定した現象を利用する方向へ移っていった。
1960年には1900年の回帰年を基準とする定義が採用され、1967年にはセシウム133原子の遷移を利用する定義が選ばれた。現在の国際単位系では、その考え方をさらに明確にした表現が用いられている。
国際度量衡局(BIPM)の資料によれば、1960年以前の秒は平均太陽日の86,400分の1として定義されていた。しかし、地球の自転に不規則な変動があることが明らかになり、精密な単位としては十分ではなくなった。
1960年には回帰年に基づく秒の定義が採用され、1967〜1968年の第13回国際度量衡総会で、セシウム133原子の遷移に基づく定義が選ばれた。
その後、2018年の決議によって定義の表現が改められ、現在はセシウム133の特定の遷移周波数に固定された値を与える形で秒が定義されている。
※BIPMの秒の歴史に関する解説を記事用に要約
出典:BIPM「Historical perspective: Unit of time, second」
ここで興味深いのは、新しい定義を採用するたびに、日常生活で使う一秒をまったく別の長さへ変更しようとしたわけではないことだ。
それまでの秒との連続性を保ちながら、より正確に再現できる基準を選んできたのである。
セシウム133原子が定める「9,192,631,770」という数字
現在のSI秒には、9,192,631,770という大きな数字が登場する。
これは、セシウム133原子の基底状態にある二つの超微細構造準位間の遷移に対応する周波数へ、正確に与えられた値だ。単位はHz、つまり一秒間の振動回数である。
その遷移に対応する電磁波が9,192,631,770周期を刻む時間が、現在の定義による一秒に相当する。
ただし、原子時計が目に見える原子の振動を一つずつ数えているわけではない。原子の遷移を利用して発振器の周波数を高精度に合わせ、安定した時間間隔の基準を実現している。
BIPMは、外部からの摂動を受けていないセシウム133原子の基底状態の超微細構造遷移周波数を、正確に9,192,631,770Hzとすることで、秒を定義している。
この定義は、地球の自転速度が日によって変わることを理由に変更されるものではない。
※BIPMのSI秒の定義を記事用に要約
出典:BIPM「SI base unit: second」
先ほどまで見てきたシューマン共振も、周波数を使って表す現象だった。ただし、こちらは雷や電離層などの影響によって観測結果が変動する自然現象である。
一方のSI秒は、原子の特定の遷移周波数に決められた値を与えることで定義した単位だ。
どちらもHzで表せるからといって、同じ役割を持つわけではない。シューマン共振の周波数が変わっても、それだけで一秒の長さが変わることにはならないのである。
世界中の原子時計は、どうやって同じ時刻を共有しているのか
ここまでで分かったのは、一秒という時間間隔をどう定義するかという話だ。
だが、正確な一秒を刻める時計を二つ用意しても、それだけでは同じ時刻を表示するとは限らない。
例えば、一方を午前9時、もう一方を午前9時5分に合わせて動かせば、どちらも正しい速さで進んでいても、二つの時計には5分の差が残る。
正確な時間間隔を測れることと、同じ時刻を共有できることは別の問題なのだ。
そこで登場するのが、国際原子時(TAI)と協定世界時(UTC)である。
TAIは世界各地の原子時計のデータから計算される時刻尺度で、UTCはTAIと同じ速さで進みながら、従来はうるう秒を使って地球の自転との関係を保ってきた。
日本標準時もUTCを基礎としており、日本ではUTCより9時間進んだ時刻が使われている。
それでは、そのUTCはどこで作られているのだろう。
実は、世界のどこかに一台だけ、絶対的な基準となる時計が置かれているわけではない。世界中の研究機関が維持する原子時計のデータを持ち寄り、国際的な時刻尺度が計算されている。
BIPMの解説によれば、UTCの計算には世界約80の時間研究機関と約450台の原子時計のデータが利用されている。
各研究機関は、UTC(k)と呼ばれる、リアルタイムで利用できるUTCの実現値を維持している。BIPMは各機関の時計データと時計同士の比較結果を使って国際的な時刻尺度を計算し、毎月「Circular T」を公表している。
Circular Tには各研究機関のUTC(k)とUTCとの差が示され、機関ごとの時刻のずれを把握できる。
※BIPMのUTC生成方法とCircular Tに関する解説を記事用に要約。参加機関数・時計数は変動し得る
出典:BIPM「Coordinated Universal Time(UTC)」
関連資料:BIPM「Circular T」
少し意外なのは、国際的な基準として計算されるUTCが、観測結果を集めた後に確定されるという点だ。
世界中の時計が一台の時計を直接見ているのではない。各機関が自分たちの時計を維持し、衛星などを使って互いの時刻差を比較しながら、共通の基準との一致を確かめている。
人類が作り上げたのは、正確な時計だけではなかった。離れた場所にいる誰もが、同じ時間間隔と時刻を共有するための仕組みだったのである。
2026年、人類は「1秒」の将来についても決議していた
2026年10月の第28回国際度量衡総会では、うるう秒の実質廃止だけが話し合われたわけではない。
同じ会議で、将来の秒の定義に関する決議4も採択されている。
背景には、現在のセシウム原子時計を上回る精度を持つ光時計などの技術が発展していることがある。
より精密な時計が実現できるなら、その技術を次の秒の定義に利用できないだろうか。国際的には、そんな検討が進められている。
BIPMは、光周波数標準の性能向上を背景に、将来の秒の再定義について検討している。
候補には、特定の光学遷移を基準とする方法や、複数の光学遷移の周波数を組み合わせる方法がある。
再定義の正式承認は早くても2030年の国際度量衡総会以降とされており、時計同士の国際比較や、現在の秒との連続性を確保する準備も必要になる。
2026年の第28回国際度量衡総会では、秒の将来の定義に関する決議4が採択された。ただし、現在のセシウム133に基づく定義が、2026年に変更されたわけではない。
※BIPMの再定義に関する公式解説と2026年決議一覧を記事用に要約
出典:BIPM「Frequently Asked Questions concerning the Redefinition of the Second」
関連資料:第28回CGPM決議一覧
ここでも、うるう秒の廃止とは区別しておきたい。
うるう秒の問題は、世界共通の時刻を地球の自転へどう合わせるかという運用の話だ。一方、秒の再定義は、時間間隔の単位を、どの自然現象によってより正確に実現するかという話である。
同じ「時間」のニュースでも、扱っているものは違う。
それでも両者には共通する考えがある。これまでの尺度との連続性を保ちながら、世界中で使える基準の精度と信頼性を高めていこうという姿勢だ。
私たちは時間の本質をすべて理解しているわけではない。それでも、時間間隔を精密に測り、共通の単位として利用する方法を発展させてきた。
そして物理学には、さらに興味深い話がある。
同じように作られた精密な時計でも、置かれた環境によって、実際に経過する時間が異なる場合があるというのだ。
その違いは、私たちのスマートフォンが利用する位置情報にも関係している。
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スマートフォンで地図アプリを開くと、現在地を示す印が画面に現れる。
道に迷ったときや初めての場所へ行くとき、これほど便利な機能はない。ところが、その現在地を求める技術をたどっていくと、地球の上空約2万キロメートルを飛ぶ人工衛星と、アインシュタインの相対性理論に行き着く。
しかも、相対性理論が関係しているのは、単に難しい計算の部分だけではない。
人工衛星に搭載された時計と、地上に置かれた時計では、実際に時間の進み方が異なるのである。
「時間が速くなる」という都市伝説を調べてきた後だと、少し意外な話に聞こえるかもしれない。しかし、こちらは物理学によって予測され、精密な時計でも確かめられている現象だ。
速く動く時計は遅れる――特殊相対性理論が示すこと
私たちは、同じ一秒なら、どこにある時計でも同じ長さだと考えがちだ。
ところが1905年にアインシュタインが発表した特殊相対性理論では、異なる運動状態にある時計を比較すると、経過する時間に違いが生じる。
GPS衛星は、地上から見て非常に速い速度で地球の周りを飛んでいる。その運動による相対論的な効果だけを考えると、衛星の時計は地上の時計より遅く進む方向の影響を受ける。
GPS衛星の場合、その差は一日あたり約7マイクロ秒と説明されている。マイクロ秒は100万分の1秒だから、わずか0.000007秒ということになる。
ただし、時計の比較は単に「動いている方が遅れる」という言葉だけですべて説明できるわけではない。どのような運動をし、どの条件で時計を比較するかが重要になる。
GPSについては、地球の周りを回る衛星と地上という、具体的な条件のもとでの差を扱っている。
ところが衛星の時計は、重力の影響で速くなる
話はここで終わらない。GPS衛星の時計には、今度は速く進む方向の効果も働いている。
それが一般相対性理論によって説明される、重力と時間の関係だ。
地球の表面と、上空約2万キロメートルにあるGPS衛星の軌道では、重力の条件が異なる。その違いによって、衛星の時計は地上の時計より速く進む方向の影響を受ける。
この効果は一日あたり約45マイクロ秒。先ほどの運動による約7マイクロ秒の遅れを差し引くと、衛星の時計は地上の時計より、一日あたり約38マイクロ秒速く進む計算になる。
米国国立標準技術研究所(NIST)は、GPS衛星の原子時計について、特殊相対性理論による運動の影響で地上の時計より一日約7マイクロ秒遅れ、一般相対性理論による重力の違いで約45マイクロ秒速く進むと説明している。
両者を合わせると、衛星の時計は一日あたり約38マイクロ秒速く進む計算になる。
これは相対論的な補正を行わなかった場合の進み方の差であり、運用中のGPS衛星の時計が、その分だけ無補正でずれ続けているという意味ではない。
※NISTの相対性理論とGPSに関する公式解説を記事用に要約
出典:NIST「Putting Einstein to the Test」
私たちの感覚では、ほとんど無視できそうな差だろう。しかしGPSでは、そうはいかない。
38マイクロ秒を無視すると、位置情報はどうなるのか
GPS衛星は、自分の位置と信号を送信した時刻に関する情報を地上へ送っている。
受信機は複数の衛星から届いた信号を使い、伝わるまでにかかった時間をもとに衛星との距離を推定する。電波は光とほぼ同じ速さで進むため、時刻の誤差は、そのまま距離を求める計算へ影響する。
先ほどの38マイクロ秒に光の速さを掛けると、およそ11.4キロメートルになる。
これは時計の進み方の差を、電波が進む距離に換算したものだ。実際のスマートフォンの現在地が、そのまま毎日11.4キロメートルずつずれるという意味ではない。
ただ、わずかな時刻の差でこれほど大きな距離に相当することを考えれば、GPSにとって時計がいかに重要かが分かる。
なお、GPS受信機は一つの衛星だけを頼りにしているわけではない。通常は少なくとも四つの衛星からの信号を利用し、三次元の位置と受信機自身の時計のずれを推定する。
米国連邦航空局(FAA)は、GPS衛星が高精度な時計を搭載し、送信時刻などの情報を電波に含めていると説明している。
受信機は衛星からの信号を使って距離に相当する量を求め、電離層や対流圏による電波の遅れなども考慮する。
通常は少なくとも四つの衛星の情報から、緯度・経度・高度と受信機の時計のずれを推定できる。このため、一般の受信機に衛星と同等の原子時計を積む必要はない。
※FAAのGPS測位方式の公式解説を記事用に要約
出典:FAA「GPS — How It Works」
GPSの設計には、相対性理論による時計の平均的な進み方の差が、あらかじめ考慮されている。実際の運用では、衛星の軌道や時計の状態に応じた補正も行われる。
相対性理論は、宇宙の遠い場所を説明するだけの理論ではない。私たちが道に迷ったときにも、その計算結果が役に立っているのである。
スマートフォンの時計は、どこから正しい時刻を受け取るのか
スマートフォンは、時刻を自動設定にしておけば、利用者が時計を合わせる機会はほとんどない。
しかし、端末の内部時計が原子時計と同じ精度で動いているわけではない。わずかなずれが生じるため、通信ネットワークなどから時刻情報を受け取って補正する仕組みが利用されている。
NISTが紹介する代表的な経路では、原子時計によって維持される時刻情報がGPS衛星へ伝わり、基地局が衛星から正確な時刻を受け取って、通信ネットワークの同期に利用する。
NISTは、正確な時刻が世界の原子時計からスマートフォンなどへ届く仕組みを紹介している。
米国では米海軍天文台(USNO)の時刻尺度をもとにGPS衛星の時計が調整され、携帯電話の基地局は衛星から高精度の時刻情報を取得できる。
通信ネットワークで利用される時刻情報によって、スマートフォンやスマートウォッチの時計のずれも修正できる。
ただし、実際に端末が時刻を取得する経路は一つではなく、携帯電話網やインターネットなど、機種や設定によって異なる。
※NISTの公式解説を記事用に要約。時刻伝達の経路は代表例
出典:NIST「How Does Atomic Time Get to Your Phone?」
つまり、手元の画面に表示される時刻も、その背景をたどれば、世界中で共有されている時間の基準につながっている。
精密な時間計測がなければ、何が困るのか
高精度な時刻が重要なのは、GPSの位置情報だけではない。
通信ネットワークでは、離れた装置が適切なタイミングで情報をやり取りする必要がある。電力網では設備の状態を同じ時刻のもとで比較する用途があり、金融取引では、いつ何が起きたかを記録することが重要になる。
もちろん、必要とされる精度は分野によって異なる。それでも、共通の時刻を信頼できる形で利用できることが、現代社会のさまざまな仕組みを支えている。
米国政府のGPS公式サイトは、GPSが位置情報に加えて正確な時刻を提供しており、通信ネットワーク、電力網、金融ネットワークなどの時刻同期にも利用されていると説明している。
これらの分野では、GPSの位置情報そのものが不要でも、その時刻情報が重要になる場合がある。
※GPS.govの公式解説を記事用に要約
出典:GPS.gov「GPS and Telling Time」
人類は、時間というものの本質をすべて理解しているわけではない。それでも、時間間隔を数値で表し、共通の単位として定義し、精密な時計を作り上げてきた。
その成果は、GPSや通信だけでなく、さまざまな科学研究を進める基盤にもなっている。
もちろん、スマートフォンやAIの誕生を時間計測の進歩だけで説明することはできない。半導体、電子工学、数学、計算機科学など、無数の研究が積み重なっている。
しかし、それらの研究を支える土台の一つとして、時間間隔を正確に測り、誰もが共有できる尺度として扱えるようにしてきたことの価値は大きい。
時間の正体が分からなくても、私たちは時間を測れる
時間加速説を調べていたはずが、いつの間にか原子時計や人工衛星、相対性理論にまで話が広がってしまった。
しかし、こうして眺めてみると、普段は同じ「時間」という言葉でまとめているものが、実はいくつもの異なる問題に分かれていると分かる。
地球が一回転する長さ。人間が感じる一日の速さ。原子時計が測る時間間隔。そして、異なる運動状態や重力環境にある時計を比較したときの、経過時間の違い。
物理学は、そのうちのいくつかを驚くほど正確に説明し、予測できるようになった。一方で、時間の根本的な性質については、今も物理学や哲学で問いが続いている。
それでも私たちは時間を測り、その結果を利用できる。原子時計で一秒を実現し、離れた時計を比較し、必要な補正を加える。その積み重ねが、普段使っている道具や社会の仕組みへつながっている。
では、最初の疑問に戻ろう。
2026年にうるう秒の実質的な廃止が決まったことは、時間そのものが速くなるという意味だったのだろうか。そして、古い記録に登場する「一日16時間」という数字は、何を示していたのだろう。
時間は速くなったのか――時計を見つめ直す
昔は24時間だった一日が、今では16時間になっている。
そんな奇妙な話から始まった今回の調査だったが、実際に地球の一日がそこまで短くなったという観測結果は見つからなかった。
古い資料に残っていたのは、「24時間が16時間ほどに感じられる」という表現だった。一方、後年には、それが地球の自転そのものの変化であるかのように語られる例も現れている。
この二つの話が、いつ、誰によって結び付けられたのか。そこは最後まで分からなかった。Gregg Braden氏の著書をめぐる言説も、原著との照合ができていない以上、発祥を断定することはできない。
ただ、噂の周囲に登場する現象が、すべて架空だったわけではない。
地球の自転速度は実際に変わるし、シューマン共振も実在する。時間の感じ方についても、心理学の研究がある。そして相対性理論によれば、異なる条件で動く時計が刻む経過時間には、本当に差が生じる。
それぞれの現象には、十分に不思議で興味深いところがある。
しかし、地球の自転が少し変化したことや、電磁波の共振周波数が変動したことは、そのまま「一日が16時間になった」という証拠にはならない。
2026年に決まったうるう秒の実質的な廃止も、時間間隔そのものを変える決定ではなかった。地球の不規則な自転と、世界中で共有する時刻との付き合い方を見直す決定だったのである。
考えてみれば、人類が時間を測ってきた歴史は、自然界のさまざまな変化と向き合ってきた歴史でもある。
太陽や星の動きを頼りに時刻を知っていた時代から、より規則的な現象を探し、原子の性質を利用して一秒を定義する時代へ。さらに離れた時計を精密に比較し、人工衛星や通信網を通じて共通の時刻を利用するようになった。
時間の本質について、すべての答えが見つかったわけではない。それでも私たちは、時間間隔を驚くほど正確に測り、その成果を日常の中で使っている。
明日も朝になれば、時計を見て出掛ける準備をするだろう。仕事や家事に追われているうちに夕方になり、ふと「もうこんな時間か」と思うこともあるはずだ。
その感覚は、きっとこれからも変わらない。
ただ、次に時計を見るときは、その数字の向こう側にあるものを少し思い出してみてもいいかもしれない。
わずかに揺らぎながら回る地球と、精密に時間間隔を測る原子時計。そして、同じ一秒を世界中で共有しようとする人々の営みを。
私たちが何気なく過ごしている一秒には、思っている以上に長い歴史がある。
FAQ|うるう秒廃止と時間加速説のよくある疑問
うるう秒の実質的な廃止は、私たちの時計にどんな影響を与えるのでしょうか。また、地球の自転が速くなっているという話や、「一日が16時間になった」という噂とは関係があるのでしょうか。ここまでの内容を、よくある疑問ごとに整理します。
Q. うるう秒は2026年に廃止されたのですか?
A. 2026年10月15日に実質的な廃止につながる決議が採択され、新しいUTCの運用は2027年5月20日から始まります。
第28回国際度量衡総会で、地球の自転に基づく時刻(UT1)と協定世界時(UTC)の差を最大3,600秒まで許容することが決まりました。決議が採択された年と、運用が始まる年は異なります。
Q. 2027年から時計が1時間進んだり、1秒が短くなったりするのですか?
A. いいえ。2027年5月20日に時計を一斉に1時間変更する決定ではありません。
3,600秒という数字は、UT1とUTCの差について新たに定められた最大許容値です。1秒という時間間隔の定義も変わりません。
今回決まったのは、世界共通の時刻を地球の自転へ頻繁に合わせ直す運用を見直すことであり、日常の時計が突然大きく進んだり遅れたりするわけではありません。
Q. 地球の自転が速くなると、一日の長さは短くなるのですか?
A. はい。地球の自転速度が速くなれば、地球の回転に基づく一日の長さは短くなります。
ただし、実際に観測される変化は一般にミリ秒単位です。地球の自転は常に速くなり続けているわけではなく、大気、海洋、地球内部の運動などによって短期的にも長期的にも変動しています。
Q. 「昔の24時間が今では16時間になった」という説は本当ですか?
A. 地球の一日が実際に16時間になったという科学的な証拠はありません。
この説には、「時間が16時間ほどに感じられる」という主張と、「一日そのものが16時間になった」という主張があります。
2001年の日付を伴う古い言説には前者の表現が見られます。しかし、それを書いた最初の人物や、後者の主張へ変化していった正確な経緯は確認できていません。
Q. シューマン共振が上昇すると、時間も速くなるのですか?
A. そのような因果関係を示す科学的な根拠は確認されていません。
シューマン共振は、地表と電離層の間に生じる実在の電磁気現象です。観測される周波数や信号の強さには変動がありますが、それを時間間隔の短縮や、地球自転の大幅な加速と同一視することはできません。
Q. なぜ年齢を重ねると時間が速く感じられるのですか?
A. 年齢だけでなく、注意、記憶、経験、感情などが関係していると考えられています。
時間を過ごしている最中の感じ方と、後から振り返ったときの感じ方も同じとは限りません。年齢との関連を示す心理学研究はありますが、それだけで個人差のすべてを説明できるわけではありません。
こうした主観的な時間感覚の変化は、時計が測る時間間隔そのものが短くなったことを意味しません。
Q. うるう秒とうるう年は何が違うのですか?
A. うるう秒は世界共通の時刻を調整する仕組みで、うるう年は暦と季節のずれを調整する仕組みです。
うるう秒は、地球の自転に基づく時刻とUTCとの差を小さく保つために使われてきました。
一方、うるう年は、地球の公転に関係する季節の周期と暦とのずれを小さくするため、通常は4年に一度、2月29日を設ける仕組みです。ただし、西暦では100で割り切れる年などに例外があります。
今回のうるう秒の実質的な廃止によって、うるう年までなくなるわけではありません。
Q. 2026年12月31日に、うるう秒は入るのですか?
A. 入りません。
IERSは、2026年12月末にうるう秒を実施しないことを発表しています。2026年の制度変更とは別に、年末の実施予定は公式速報で確認できます。
国際地球回転・基準系事業(IERS)は、2026年7月6日付のBulletin C72で、2026年12月末にはうるう秒を導入しないことを発表した。
※IERS Bulletin C72を記事用に要約
出典:IERS Bulletin C72
Q. うるう秒の廃止で、地球の自転を観測しなくなるのですか?
A. いいえ。地球の自転の観測は今後も必要です。
天文学、測地学、衛星の運用などでは、地球の向きや回転を正確に知ることが重要です。2026年の決議でも、UT1とUTCとの差を継続的に監視することが求められています。
変わるのは、地球の自転との差を世界共通の時刻へ頻繁に反映する運用であって、地球の動きを調べることまでやめるわけではありません。
参考資料・出典
この記事では、うるう秒に関する国際機関の決議、地球自転やシューマン共振を扱った研究論文、時間の感じ方を調べた心理学研究、時刻調整に伴うシステム障害の当事者報告などを参照しました。
また、「一日が16時間になった」という時間加速説については、関連書籍の書誌情報、古いインターネット掲示板の記録、後年の転載や検証記事を確認しています。
以下の資料は性質ごとに分類して掲載しました。都市伝説の資料は、そこに書かれた主張が科学的に正しいことを示すものではなく、その話がいつ、どのように語られていたのかを調べるための資料です。
うるう秒・UTC・1秒の定義に関する公式資料
- 情報通信研究機構(NICT)「第28回国際度量衡総会(CGPM)でうるう秒の実質的な廃止が決定」(2026年10月23日)
2027年5月20日から始まるUTCの新運用について、日本の標準時を維持する機関が発表した資料。 - 国際度量衡局(BIPM)「Resolution 5 of the 28th CGPM」(2026年)
UTCの連続性と、UT1とUTCの差の最大許容値3,600秒を定めた正式決議。 - BIPM「Resolution 4 of the 27th CGPM」(2022年)
うるう秒による時刻の不連続性を見直し、UTCの連続性を確保する方針を示した決議。 - BIPM「28th CGPM: Key outcomes and documents」(2026年)
2026年の各決議を確認できる公式一覧。UTCに関する決議5と、将来の秒の定義に関する決議4を区別するために参照。 - BIPM「SI base unit: second」
セシウム133原子の遷移周波数に基づく現在の1秒の定義。 - BIPM「Historical perspective: Unit of time, second」
地球の自転を基準とする秒から原子秒へ至る定義の歴史。 - BIPM「Coordinated Universal Time(UTC)」
世界各地の原子時計のデータを利用したUTCの生成と、その国際的な運用についての解説。 - BIPM「Circular T」
国際的なUTCと、各研究機関が実現するUTC(k)との差を確認するための資料。 - BIPM「Frequently Asked Questions concerning the Redefinition of the Second」
光時計などを背景とした、将来の秒の再定義に関する解説。 - 国際地球回転・基準系事業(IERS)「Bulletin C72」(2026年7月6日)
2026年12月末にうるう秒を実施しないことを示す公式発表。
地球の自転・一日の長さに関する観測と研究
- 国立天文台「1日の長さは変化しているの?」
地球の自転速度が短期・長期で変動する理由を説明した一般向け解説。 - IERS「Earth Orientation Data」
地球の自転や地球姿勢に関する観測データの案内。 - timeanddate.com「How Long Is Today?」
IERSのデータを利用し、日ごとの一日の長さと86,400秒との差を示す集計ページ。記事中の2026年の値は2026年10月26日時点の集計を使用。 - Zhang, Z.ほか「An approximately 70-year core-related modulation of Earth rotation and its implications for the leap second」(Earth, Planets and Space、2026年9月28日)
地球の自転変動と、地球内部の核の運動に関係する約70年周期の成分を解析した研究。 - Agnew, D. C.「A global timekeeping problem postponed by global warming」(Nature、2024年3月27日)
極域の氷床融解による質量分布の変化が地球自転と、負のうるう秒が必要になる時期の予測に与える影響を扱った研究。
シューマン共振に関する研究
- Nickolaenko, A.・Hobara, Y.・Hayakawa, M.「The singular spectral analysis of variations of the fundamental Schumann resonance frequency (~8 Hz) over 16 years」(Journal of Atmospheric Electricity、第45巻、2026年)
1994〜2009年の16年間にわたる基本シューマン共振周波数の変動を解析した研究。 - Tacza, J.ほか「Schumann Resonance Frequency Increase Following Recurrent Solar Wind Stream Onsets」(Earth and Space Science、2026年)
高速太陽風に関連する事象と、シューマン共振の観測ピーク周波数の小さな変動を調べた研究。
主観的な時間感覚に関する心理学研究
- Wittmann, M.・Lehnhoff, S.「Age effects in perception of time」(Psychological Reports、2005年)
14〜94歳の499人を対象に、年齢と時間の経過感覚の関係を調べた研究。 - Block, R. A.・Zakay, D.「Prospective and retrospective duration judgments: A meta-analytic review」(Psychonomic Bulletin & Review、1997年)
時間の経過を意識している場合と、後から振り返って判断する場合を比較したメタ分析。 - 「Judgment of duration and passage of time in prospective and retrospective conditions and its predictors for short and long durations」(2022年)
時間の長さや進み方の判断と、注意や感情などとの関連を調べた研究。
うるう秒によるシステム障害の当事者報告
- Cloudflare「How and why the leap second affected Cloudflare DNS」(2017年1月1日)
うるう秒に伴う時刻の後戻りによって、CloudflareのDNSサービスの一部に障害が発生した経緯を説明した公式報告。 - Red Hat Bugzilla #836803(2012年)
Linuxの高精度タイマーとうるう秒に関係した不具合の記録。 - Meta Engineering「It’s time to leave the leap second in the past」(2022年7月25日)
過去のうるう秒関連障害と、時刻の連続性を重視する理由を説明した技術記事。
原子時計・GPS・相対性理論に関する資料
- 米国国立標準技術研究所(NIST)「Putting Einstein to the Test」
重力と運動による時計の進み方の違いや、相対性理論の検証についての解説。 - 米国連邦航空局(FAA)「GPS — How It Works」
人工衛星からの時刻情報を使って距離と位置を推定するGPSの基本的な仕組み。 - NIST「How Does Atomic Time Get to Your Phone?」
原子時計に基づく時刻情報が、通信網などを通じてスマートフォンへ届く仕組み。 - GPS.gov「GPS and Telling Time」
GPSの高精度な時刻情報が、通信・電力・金融などで利用されていることを紹介した公式資料。
時間加速説の形成史を調べるための資料
以下は、「一日16時間」説がいつ、どのような形で語られていたのかを調べるための資料です。都市伝説の主張が科学的に正しいことを示すものではありません。
古いウェブ資料には、別の文章からの引用、転載、後年に復元されたページなどが含まれます。そのため、資料に記された日付、現在の掲載ページが作られた時期、主張の最初の発信者を同一視しないよう注意しています。
また、Gregg Braden氏の関連書籍については書誌情報を確認しましたが、「24時間が16時間に感じられる」という一節が1994年の原著に存在するかどうかは確認できていません。
- WorldCat『Awakening to Zero Point: The Collective Initiation』書誌情報
Gregg Braden氏による1994年刊の関連書籍を確認するための目録。原著の該当本文を直接照合した資料ではない。 - L. Oliver Duffy「Schuman Resonance」
2001年の日付を持つシューマン共振上昇説の文章と、それに対する反論を収録したウェブ資料。現在閲覧できるページは過去の記録から復元されたもの。 - Time Travel Institute「Schumann Resonance rise proposed as evidence of shifting timeflow」(2002年7月16日)
シューマン共振と時間の変化を結び付け、「24時間が16時間ほどに感じられる」という趣旨の文章が掲載された掲示板記録。当時の原投稿者は特定できていない。 - Google Groups「Jel」(2003年4月30日以降)
時間が速く過ぎるように感じられるという話題についての掲示板記録。「一日16時間」説の直接的な初出資料とは確認できていない。 - Golden Age of Gaia「Gregg Braden, Zero Point and the Schumann Resonance」(2010年11月17日)
ゼロポイント、シューマン共振、時間加速説の関係を紹介する後年の資料。1994年の原著との一致は未確認。 - AFP Fact Check「No, days are not getting shorter due to quickening Earth rotations」(2019年12月30日)
地球の自転が速くなり、一日が16時間になったという主張を検証した記事。都市伝説の初出を示す資料ではない。
この記事は、2026年10月26日までに確認できた情報をもとに作成しています。地球自転の観測値、国際的な時刻制度の運用、今後の秒の再定義に関する情報は、将来更新される可能性があります。

